WELQ(ウェルク)騒動と米大統領選のフェイクニュースのもたらすもの

DeNAが運営する健康情報キュレーションサイトWELQの11月下旬の炎上を発端としてWELQ以外のサイトにも批判の目が向けられ、12月1日にはDeNAの運営する「キュレーションサイト」はMERYを除いた9つのサイトが閉鎖すると発表されました。

閉鎖されたキュレーションサイト

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代表取締役社長兼CEO 守安功からの一連の事態に対するお詫びとご説明 | 株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】

女性向けキュレーションメディアMERYのみが、編集方針が異なるということで残されたとのこと。

しかしMERYも記事の量産体制と改変コピペの実態は変わらなかったようで結局非公開となり、DeNAの運営していた「キュレーションメディア」はすべてが閉鎖されました。

「MERY」記事量産の現場 「90分に1本のノルマ」インターンが証言 – withnews

WELQというかDeNA Palette構想の孕んでいた問題

DeNA Palette構想とはキュレーションサイトを展開するプロジェクト名で、WELQもその一部でした。

DeNA、4つのジャンル特化型キュレーションメディアを提供開始 | 株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】

WELQは医師からの批判があったにも関わらず間違った医療情報を掲載し続けたたことが炎上のきっかけとなりました。

WELQは医療情報というデリケートな情報を扱ったために最初に火がつきましたが、根っこにある問題はDeNA Paletteの構造的なもので、DeNAの運営していたキュレーションメディアすべてに当てはまりました。

構造的な問題点

いい加減な記事を掲載していた、という点は構造的な問題によるものです。

  • キュレーションといいつつリンクも引用もしない
  • UGC(User Generate Content)を装いながら、記事執筆を依頼
  • 責任の所在を投稿者とすることで、事実上の編集編集責任を逃れる
  • 盗用を推奨するような記事執筆者への指示

他サイトからの文言の転用を推奨していると捉えられかねない点がございました。この点について、私自身、モラルに反していないという考えを持つことができませんでした。

代表取締役社長兼CEO 守安功からの一連の事態に対するお詫びとご説明 | 株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】

上記の構造で実現できることは、低コストでSEO(検索エンジンの上位表示)をする、の一点だけ。質もオリジナリティも意識しないという点で、割り切った方針と言えます。

DeNAほどあからさまにやっているかは別としても、信憑性と盗用の問題は多くの「キュレーションメディア」でも認識していたようで、WELQ炎上をきっかけとして多くのサイトで記事が非公開となっています。

「キュレーションメディア」が上位表示されることに対する批判への違和感

そしてこの騒動についての記事で、乱造された記事で作られた「キュレーションメディア」が、Google検索で上位表示されていたことが、検索エンジンと問題という指摘が散見されます。

例えば東洋経済の「DeNA「WELQ」騒動、本当の敗者とは誰なのか?」という記事で、グーグルが「Losers / 敗者たち」に分類されています。

グーグル:同社については、これまでも何度も触れた。今回、もっとも大きな失望を買った関係者のひとりだろう。もちろん、Googleのシステムが有用で素晴らしいのは変わらない。しかし、悪貨が良貨を駆逐することもある。この問題は、まさにそれを絵に描いた形となった。

コンテンツファーストと言いながら、盗用をしているサイトを上位表示させていたのだから、この批判は当然と言えます。

コンテンツの質と価値とは

ではコンテンツの質の判断するのは誰か、という疑問が生じます。

Googleを始めとする検索エンジンはアルゴリズムで「コンテンツの質」を形式的に判定しています。

こういう内容と形式ならこのくらいの価値があるだろう、あれよりも上位に表示しようと判断しているわけです。

では、それ以上踏み込んだ、内容を含めたコンテンツの質は評価はどうするのか。

少なくとも現在のアルゴリズムでは判断できないので、Googleでは人力による手動ペナルティも併用しています。

これはある程度SEOを意識したことがある人なら知っているわけで、Googleの機械的な判断は万能ではない、ということを批判しても意味がない。

じゃあどう判断するのか。

専門家が執筆した正確な記事であれば、万人が質が高いと評価するでしょう。

しかし、専門家が学会としては認められていない説を書いたらどうするのか。そんなの一般人には判断すらできません。

また、質が高くても、専門的すぎる記事は門外漢には理解不能です。そんなものを検索結果として出力されることを一般人は望んでいない。

情報の質と価値と検索結果の順位付けは、たいへん難しい問題です。

粗悪記事でも求める人がいる

そして検索する人は必ずしも正確な記事を求めるわけでもないということがあります。

ぶっちゃけると東スポは名誉毀損にあたる記事を書いても、そういうものだと分かっているから裁判でも問題なしとされています。

社会的事象を専ら読者の世俗的関心を引くようにおもしろおかしく書き立てるものであり、東京スポーツの本件記事欄もそのような記事を掲載するものであるとの世人の評価が定着しているものであって、読者は右欄の記事を真実であるかどうかなどには関心がなく、専ら通俗的な興味をそそる娯楽記事として一読しているのが衆人の認めるところである。そして、真摯な社会生活の営みによって得られる人の社会的評価は、このような新聞記事の類によってはいささかも揺らぐものでないことも、また経験則のよく教えるところである。

東スポのロス疑惑裁判(Wikipedia)

東スポは記事の信頼性には疑問があっても売れているし、ネタにもされる。

正確性に欠ける記事もありの体質の新聞だからと言って、検索結果から除外するのは利用者の利益にはなりません。

アメリカ大統領戦の「フェイク・ニュース」も同じ問題が

米大統領戦では偽ニュース(フェイクニュース)の流布に一役買ったとして、フェイスブックやGoogleが批判されました。

フェイスブックのザッカーバーグは当初は対応策を講じないとしていました。

「偽ニュースは(ネット上の)コンテンツのごく一部に過ぎず、個人的には、それが選挙結果を左右したというのはかなりクレージーな考えだと思う」とザッカーバーグは語り、「何が真実かを見きわめるのは難しい」として、偽ニュースを検閲しない考えを示唆した。

ネットで飛び交う偽ニュースがトランプを大統領にしたのか? ニューズウィーク日本版

この記事でも触れられているように、この手の情報制限は検閲にあたります。

これが1つのメディア内であれば編集責任で終わるけれど、責任を負って編集したものを流通させるのを阻止するという仕組みは非常に危うい。

かつてイラク戦争に突入したブッシュ大統領を批判したDixie Chicksの曲をラジオ局が流さないことがありました。ネットワークからの指示があったかどうかについて上院での公聴会も開かれています。

DIXIE CHICKS STAR IN SENATE RADIO CONSOLIDATION HEARING

フェイクニュースについてはGoogleもFacebookも対応を考えているとのことなので今更ではありますが、GoogleやTwitter、Facebookに責任を求めるのは正しいことだとは到底思えません。

情報の質は求める人が決める

結局情報の質は誰が決めるのか。

どこからどうみてもコピーだったり、あまりにも読み手のメリットにならないであろうよくあるコンテンツで、Googleが評価する価値なしと判断して圏外に追いやることがあります。

しかし、形式的にコピーコンテンツであることが明らかでない情報の価値は、読み手が判断する余地があるべきです。

そうでなければ検閲にもなりかねない。

WELQの誤った情報は論外ですが、役に立ったと思った人がいる。WELQで得た知識を持ち込まれて困惑した医師もいる。

このあたりは検索エンジンやソーシャルメディアのシステム側ではなく、個別で批判されて是正されるべきだろうと思います。

もっともWELQは批判に聞く耳を貸さずにきた結果が炎上だったのだからどうしようもない。

Yahooの子会社の女性向けキュレーションサイトTrillでは、今年10月に画像の無断使用を指摘されて、そのライターの記事を削除しています。クレームが有った時点で対応しないあたりにDeNAの問題があるわけで、綺麗事では通じないというのも事実です。

Googleがコンテンツの質の評価に慎重なのは、問題の微妙さを認識しているからでしょう。

良識ある行動をしている人には関係ないとはいえ、なんらかの基準に適合しない情報の流通が減ることになります。これは果たして歓迎していいことなのでしょうか。

対抗となる検索エンジンがあると差別化のために対応が違ってくるので、どこかでバランスが取れると思うんですけどね。

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