高齢者の事故は多いのか少ないのか、本当のところは?

2017年12月26日経済・統計

高齢者が車の事故を起こすと年齢を強調して報道されるためか、高齢者の事故率が高いと思っている人が多いです。

ぼく自身、ふらついてる車を運転しているのが高齢者だと「やっぱり」と思うことはあります。しかし実際の「事故」件数となると、高齢者が事故を起こす率は突出して高いとは言えません。

おそらく全事故に占める高齢者割合の比率が高まっているために高齢者の事故が増えているように感じるんだと思います。

都内における交通事故の総件数は年々減少し続け、平成28年は32,412件で10年前の半数以下となりました。

その一方で高齢運転者が関与する交通事故の割合は年々高くなり、平成28年は総件数の22.3%を占め、平成19年と比べて約1.7倍となっています。

防ごう!高齢者の交通事故!

考えてみれば当然のことですが、高齢者人口が増えれば高齢者の起こす事故件数も増えるのが道理。それを踏まえて、統計から数字を検証します。

 

交通事故の総件数は減少

平成19年には13%だった高齢者の事故割合は平成28年には22.3%にまで上昇しています。これだけを見ると確かに全事故における高齢者の占める割合は高まっています。

高齢者の事故の割合は6年間で4.6%増。

高齢化が進んでいるのだから、全事故に対する高齢者の事故比率が上がるのはあたりまえのことです
そこで人口構成に左右されない免許保有者10万人あたりの事故件数を確認します。

「原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移」

運転免許所持者10万人あたりの年齢別事故件数を比較すると、高齢者の事故の割合は極端に高いわけではありません。ただし高齢者の中でも80歳以上と80歳未満では数字が大きく異なっています。「高齢者」と一括りにせず、年代で分けたほうが適切でしょう。

16~19歳の事故の大半は原付によるものなので除外しても、高齢者の免許保持者10万人あたりの事故件数は、20~29歳の事故件数よりも低くなっています。20~29歳の事故件数員は原付の事故も多く含まれていると思われますが、この年代の「車の」保険料が高いことを考えても、車を運転中の事故率は相対的に高いと考えられます。

※『第一当事者』は過失割合の一番高い人のこと

 

事故件数も減少

冒頭で引用した警視庁の「防ごう!高齢者の交通事故!」にも書かれているように、交通事故件数そのものが減っています。

この表に記載されている指数は、平成18年の事故件数を100とした時の割合を表しています。85歳の指数は64で、事故件数そのものが減っていることが分かります。運転免許保有者10万人あたりの事故件数なので人口構成も関係なく、事故の件数は確実に減っていることになります。

ただ、全年齢の事故指数が55なのに対し、80歳~84歳が62、85歳以上が64となっており、高齢になるほど事故の減少率は下がっています。

 

事故の度合い、死亡事故率

年齢帯にかかわらず事故件数は年々減っています。80歳以上の事故率は高くなっているものの件数は減っていることを確認したところで、最後に死亡事故の件数を見てみます。

2017年1月に警察庁の公表した「高齢運転者に係る交通事故の現状」に、免許保有者10万人あたりの死亡事故件数が記載されています。

高齢運転者に係る交通事故の現状

75歳以上が第一当事者となった死亡事故の件数は10万人あたりで9.6人、他の年齢は4.0人。75歳以上のドライバーは、平均の2.5倍近い死亡事故を起こしていることになります。

高齢者ドライバーが事故を起こす件数は極端に高いわけではないものの、死亡事故を起こす可能性は高いことが分かります。

 

高齢者の死亡事故をおこす確率は他の年代の2倍以上

高齢者が死亡事故を起こす確率はそれ以外の年代の2.5倍。

考えさせられる数字です。ただ、統計的に考えれば「高齢者の大事故:それ以外の年代の重大事故」の比率は「2.5:1」。大事故のうち4割合は高齢者意外の世代の事故です。大事故の6割を占めるはずの高齢者以外の事故が高齢者の事故ほどにニュースで報道されているかというと疑問です。

また、75歳未満とそれ以上では大きく違うため、65歳以上の年代を高齢者と一括りにせず、行政での扱いと同じく75歳未満とそれ以上で分けて考えたほうがいいでしょう。できれば80歳以上と80歳未満でも分けるほうが適切だと思われます。

高齢者の死亡事故を起こす割合が平均より2.5倍多いとなると、運転免許自主返納を促すことで重大事故の件数を減らすことはできそうです。

しかし都会ならともかく田舎では車がないと何もできなくなるのも事実。

「運転経歴証明書」を提示することで交通機関の割引などが受けられる自治体では、それなりに返納をする人もいるようです。サポートを充実させることで自主返納を促すのが一番よいのでしょうね。