労働生産性の国際比較 1時間あたりの生産性上位21国推移 2013-2017

2017年12月23日経済・統計

労働生産性の国際比較 | 日本生産性本部の発表している「労働生産性の国際比較」より、国別の1時間あたりの生産性のデータ2013年から2017年。単位はドル。

2017年に大きく変動したのはアイスランド。2016年の47.9から2017年には62.2へと大幅な上昇。順位も日本の上の20位から13位になっています。

凡例の「年」をタップするとグラフで表示。

 
テーブルの「順位」は常に上が1で下が22になります。

データ概説

【労働生産性の国際比較】は付加価値労働生産性を調査したデータ。

購買力平価で調整したGDPを基準に、一人あたり・時間あたりの生産性などを検証しています。国レベルでの生産性比較なので、国民経済生産性とも呼ばれます。

日本は主要先進国中最下位の常連であるため、生産性の向上をうたわれているのですが、定位置から抜け出せないでいます。

労働生産性は除外される要素も多いため留意すべき点もあります。

労働生産性に含まれない要素

  • 外国籍の労働
  • サービス残業
  • 不法入国者の労働

国をまたいで通勤している人の多いルクセンブルクなどは外国籍労働者の生産した付加価値が国民の生産高としてカウントされるため、原理的に労働生産性が高く出ます。

サービス残業は労働により付加価値が創出されたのに労働に含まれないことを考えると、日本の労働生産性はより低い可能性があります。

一人あたり生産性・時間当たり生産性

労働生産性国際比較についての話題では、一人あたり・時間あたりの生産性の問題が話題に上ることが多いようです。

OECD平均が51.9ドル/時、日本は46ドル/時と一割近くも低いため、生産性の改善が求められるためです。

国民経済生産性(労働生産性)は次の式で求められます。

  • 一人あたりの生産性 GDP÷労働者数
  • 時間あたりの生産性 GDP÷(労働時間x労働者数)

時間当たりの生産性が46の日本と57.9のフィンランドならば、約1.25倍の労働生産性の違いがあります。日本では1時間かけて行う仕事を、フィンランドでは50分未満で終わらせている計算になります。

生産性の高い国はここ数年の伸びが大きい

2013年から2016年の労働生産性の伸び率を見ると、日本は11%の上昇と、OECD平均の9を上回っています。しかしそれ以上の伸びの国が多いため、差が開いているところもあります(上のグラフの2013年と2016年をオンにするとはっきりわかります)。
労働生産性国際比較2013-2016
生産性の下がったノルウェーをのぞくすべての国で生産性が上昇しています。39%も上がったアイルランドは別としても、スイスの19%を筆頭に、フィンランド、オーストラリアが続きます。

労働生産性の定義

生産性とは投入量に対する産出量(得られるもの)の割合のことをいいます。

生産性 = 産出量 ÷ 投入量

たとえばA社で100個の製品を10人で作っていたら生産性は 100個 ÷ 10人で 生産性は10となります。10人で割っているのだから当然ですね。

別の会社B社では100個の製品を20人で作っていれば、 100個 ÷ 20人 で5となります。

A社の生産性は10、B社の生産性は5ということは、A社の生産性はB社の2倍ということになります。

ここまで生産性を10と5と書いてきましたが、厳密には10個/人と5個/人となります。つまりA社とB社の生産性は、一人あたりの生産できる個数を示しています。

つまり生産性とは

投入1に対して得られる成果の割合

を表す指標です。

生産性が10のA社は5のB社の倍の生産性がある、つまり生産性の高い会社となります。

異なる製品を作っていたら比較できない?

A社とB社、同じ製品を作っていたら単純に比較できますが、それぞれ別の製品を作っていたとしたらどうでしょう。

B社の作っている製品がA社の製品の4倍の利益の上げられるのものだとすると、生産性5x製品の価値4倍=20となり、利益でみるとB社の生産性はA社の倍になります。

 

生産性は大きく分けると、モノを生産するための物的生産性と、どれだけ価値(のあるもの)を生み出せるかを示す付加価値生産性の2種類があります。

生産性

  • 物的生産性は単位当たりの生産量
  • 付加価値生産性は単位当たりに生み出される価値

会社単位で考えるなら物的生産性は製造効率を、付加価値生産性は利益に結びつけられる効率を示していると考えられます。

※付加価値は売り上げから費用を除いたもので粗利とほぼ同義

生産性を測るのために最も重要な単位

アイキャッチ eye-catch

生産性は投入量に対する得られた成果の割合なので、分母となる単位が重要な意味を持ちます。

時間あたりなのか、一人あたりなのか、あるいはすべてのコストを足し合わせたものなのか。

分母とする要素によって数字も意味も変わってきます。そのため生産性を調べるための指標には労働生産性の他にもいくつかあります。

  • 労働生産性
  • 資本生産性
  • 全要素生産性

付加価値ベースの資本生産性・全要素生産性は資本回転率などとも関連します。

資本生産性は資本を分母に、全要素生産性は原材料や労働資本コストをすべて含めた生産性の指標です。

付加価値生産性の計算式

■1人あたり労働生産性
付加価値額÷労働者数

■1時間あたり労働生産性
付加価値÷(労働者数x労働時間)

物的生産性の計算式

■1人あたり労働生産性
生産量÷労働者数

■1時間あたり労働生産性
生産量÷(労働者数x労働時間)

付加価値労働生産性を上げるには?

国民経済生産性や組織ごとの労働生産性を上げるには二通りの方法があります。

  • 業務を効率化して人数を減らす
  • より高い付加価値のもの・サービスを提供する

業務の効率化はITの活用などで一人一人の作業効率を上げる、意思決定のプロセスの変更などで無駄を省くことでコストを減らすことで相対的に価値を上げます。

より高い付加価値のモノを作る・サービスを提供するのは王道とされています。同じ労力で、より付加価値の高い(=利益の大きい)ものを提供することができれば生産性は高まります。

「効率化」というと無駄を省くという意味で捉えられがちですが、生産性は利益をより大きくすることでも上がります。

いかに効率よく儲けるか

行きつく先はこれ。

生産性について個人的に思うこと

  • 紙ベース、ハンコベースで非効率な部分が多い
  • 2人で済むことなのに3人も4人も来るのは無駄
  • 会議多すぎ
  • 決めるのに時間かかりすぎ

この辺のことはよく指摘されています。非効率なことが多すぎるのは事実なので、紙ベースをやめるだけでも改善するとは思います。電子化のメリットを享受できていないという一点を解消するだけでも生産性はあがることでしょう。

しかし、産業構造の変化に対応できなかったという論には少々疑問があります。そもそも高度成長は品質管理技術によってもたらされたもの。

ウォークマンを始めとする生活を変えるほどのインパクトのある製品を作り出したソニーを例に、先端とか新しいものを作っていたという人もいます。

しかし日本の高度成長の原動力となった「国際競争力」は、品質管理技術によるもの。先端技術も高い品質を安くで提供できたことが競争力の源泉でした。

だから韓国や中国で品質管理が向上すると価格競争に対抗できなくなったという単純な話。

いいものを作る、売れるものを作るという時でも、無意識のうちにモノ・コトを「磨き上げる」あるいは「より完成度を高める」という品質管理的なところに向かってしまうのではないか。

一部の製品を除き、品質管理の高さによる競争は無理。「現在あるものを洗練させる」の考え方は捨てざるを得えない状況なのに、未だに捨てられずにいるのではないか。そう感じます。

データ出典労働生産性の国際比較 | 日本生産性本部