豆乳は健康に悪影響を与える可能性 未発酵大豆食品のリスクとメリット

健康

 健康食品としておなじみとなっている豆乳は、スーパーでもさまざまな製品が所狭しと並べられていますね。

「畑の牛肉」と言われる大豆を搾って作られる豆乳には、タンパク質をはじめとする栄養素が豊富に含まれており、さまざまな効能が知られています。

  1. コレステロール低下
  2. 骨粗鬆症予防効果
  3. 抗動脈硬化作用
  4. 更年期障害の緩和
  5. がんの予防
  6. 血糖値改善効果

これだけの効用が期待できるのですから、乳糖不耐症で牛乳が飲めない方はもとより、健康を意識するなら豆乳を積極的に飲むのは自然なことです。
また、牛乳に比べて(相対的に)糖質が少ないため、ダイエットのお供に利用している方も多いようです。

そんな万能選手の豆乳ですが、多く摂りすぎると逆に健康を阻害する可能性も指摘されています。豆乳は健康に対してポジティブなデータが多いので神経質になる必要はありませんが、デメリットも頭に入れておくほうがいいでしょう。

大豆に含まれる反栄養素

植物は細菌やバクテリアから身を守り、繁殖するための免疫機構の一つとして、人や動物に有害な化学物質をもっています。

移動して逃げることのできない植物にとって、動物に対する毒性は食べつくされて滅ばないための唯一と言って防御法。

このような植物のもつ有害成分を反栄養素(anti-nutrient:抗栄養素とも)といいます。

ひごろ私たちが口にしている野菜や果物は、これまで病気に耐え、食べつくされることもなく生き残ってきた植物です。
植物は防御機構として多かれ少なかれ反栄養素を含んでいます。

植物がもつ反栄養素は、わたしたちが食べる上でも障害になることがあります。
生で食べられない野菜はこの反栄養素を含んでおり、下ごしらえとしてアク抜きをしたり、熱を加えたり発酵により邪魔な成分を分解してから利用しています。

大豆も例外ではなく反栄養素を含んでいます。

  1. フィチン酸塩
  2. 酵素阻害物質
  3. ゴイトロゲン

反栄養素は多かれ少なかれどの植物も持っていますが、大豆はその量が多いという問題があります。本当に危険なのか、気にしないで済むレベルなのか、それぞれ順番に検証していきます。

フィチン酸塩

フィチン酸はミネラルイオンと結びつくことで、消化器官からのミネラル吸収を抑制する効果があります。

フィンチン酸のいい面として結石、大腸がん、乳がん、肺がん、皮膚がんの予防に役立つ可能性が指摘されています。

いずれの効能も金属イオンをフィンチン酸が拘束する(キレート作用)ためと考えられています。しかし全く同じ理由からフィンチン酸が過剰になればミネラルの吸収を邪魔する可能性があります。

消化器官にあるミネラルに対してフィンチン酸が多すぎると、亜鉛、銅、鉄、マグネシウム、カルシウムといった必要なミネラルまで吸収を抑制されることになります。このため栄養を十分に摂っていない状況での未発酵大豆の摂取は健康へのリスクになります。

大豆中に含まれるフィンチン酸が減る要素

30℃以上で保管をすればフィンチン酸の量は減っていくとされていますが[1]、豆乳にはそういった過程がありません。ただし、豆乳に含まれるフィンチン酸の含有量は大豆の1割程度なので、大豆に比べると含有量は低くなっています。

豆乳に関する研究でミネラル不足によるデメリットは見当たらないことから、十分な栄養を摂っている現代の日本人にとって影響はないと考えられます。

しかしダイエットなどで食事の量を減らした上に、たんぱく質を豆乳で補っている場合は注意が必要でしょう。

酵素阻害物質

大豆には有毒なたんぱく質が含まれていますが、特に問題となるのが、トリプシン・インヒビターです。トリプシン・インヒビターは、たんぱく質分解酵素であるトリプシンと結びつくため、消化不良を起こすことがあります。

トリプシン・インヒビターによってトリプシンが減ってしまうと、足りない分を補おうと膵臓で生産するために膵臓に負担がかかることが考えられます。

一方でトリプシン・インヒビターは膵臓のインスリンの生産にかかわる膵臓のB細胞を増やす効果があります。2型糖尿病予防に血糖値を下げる効果を期待するなら、トリプシン・インヒビターは残っている方が都合がいいことになります。

豆乳に含まれる酵素阻害物質を減らす要素

トリプシン・インヒビターは加熱処理によって減らすことができます。

ただ、100℃では10分間の加熱でも3割以上、120℃で10分間でも1割ほどが残ってしまうので、加熱によって完全になくすことは難しいようです。

トリプシン・インヒビターは加熱の温度が高いほど減るようなので、枝豆であれば後から塩をかけるのでなく、茹でているお湯に塩を加えておくと沸点上昇で多少効果が上がるかもしれません。

ゴイトロゲン

ゴイトロゲンは甲状腺腫誘発物質ともよばれ、甲状腺を腫れさせる物質です。

ゴイトロゲンはイチゴやモモ、キャベツ、ブロッコリー他、様々な植物に含まれていますが、動物実験のみで確認されているそうです。

食物に含まれるゴイトロゲンが人間の甲状腺に影響を及ぼしたという論文はない[2]とのことです。気にしなくて大丈夫ですね。

イソフラボンのリスク

大豆にはゲニステイン、ダイゼインといったイソフラボンが豊富に含まれていて、総称して大豆イソフラボンと呼ばれます。

大豆イソフラボンは女性ホルモン(エストロゲン)のように作用するため、女性ホルモンが不足して生じる骨粗鬆症や更年期障害といった症状に効果が認められています。また、卵巣癌リスクが低くなるという研究もあります。

男性では男性ホルモン(アンドロゲン)が原因となる前立腺癌のリスクが下がることが分かっています。その一方で、男性が大豆イソフラボンを過剰に摂取した場合は、女性ホルモンの影響で体つきが丸みを帯びるケースもあります。

こういったことから一般に大豆イソフラボンは女性ホルモン(エストロゲン)のように働くと考えられています(否定的な見解もある)。

女性ホルモンとして働くのであれば、過剰に外から摂取すると内分泌攪乱物質として働いてしまう可能性があります。このため食品安全委員会では、大豆イソフラボンの摂取上限を1日75mg程度と定めています。

豆乳ならコップ一杯(200mL)でおおむね40mgとなるので、2杯飲んだら上限を超えてしまいます。1日75mgという数字には根拠が乏しいという意見もあるためさほど気にしなくてもいいようですが、納豆1パックが約35mg程度なので簡単に摂りすぎてしまいます。大豆食品は一日二品と決めておくほうがいいかもしれません。

女性ホルモンとして働く=男性には悪影響があるかも

大豆イソフラボンが女性ホルモンのように働くということは、男性には内分泌攪乱物質として、好ましくない作用する可能性があります。

男性ホルモンの影響がもっとも大きい男性生殖器ですが、イソフラボンによる生殖器の形成には影響がない[3]とされています。

しかし精子の数や運動性についてはイソフラボンの影響で減ったというデータと、影響はないという異なる研究結果があります。

 

■マサチューセッツ総合病院不妊センター(2008年)
マサチューセッツ総合病院不妊センターに精液分析を出した不妊カップルの男性パートナー99名の15種類のダイズ食品3ヶ月間の摂取量を調査。大豆食品を多く食べた男性は、食べなかった男性に比べて1mLあたり4100万個少なかった。[4]

■ゲニステインに関するラットでの実験(2004)
より高い用量のゲニステインは、長期間の暴露で精子の先体反応性を有意に低下させた。精子の受精能およびAcRが卵子の受精を成功させるための生理学的前提条件であるという事実を考慮すると、高用量のゲニステインに精子を慢性的に曝露することは、AcRおよび精子の運動性の抑制/阻害により不妊症の問題と関連する可能性がある。[5]

■ゲルフ大学(2008年)
健康な成人男性(平均年齢27.5歳)を対象にミルクタンパク質単離物、低イソフラボン大豆タンパク質、高イソフラボン大豆タンパク質を個別に57日間摂取してもらう。3者の精子量に違いはなかった[6]

 

結果にばらつきがあるのは、イソフラボンは体質による受容性の違いがあるためかもしれません。少なくともイソフラボンが精子に影響するという結果も出ているため、男性ホルモンとのバランスに影響が出る可能性はあります。

不妊に悩んでいる方は、豆乳に限らず大豆製品の摂取を控えてみるのもいいかもしれません。

甲状腺へのヨウ素の取り込み阻害

イソフラボンは甲状腺のヨウ素取り込みを阻害します。このため、体内のヨウ素が少ない場合は甲状腺が肥大する可能性があります。

日本人は昆布や海苔やヒジキといった海草から摂取しているため問題になることはありませんが、内陸部の国では問題になることがあります。

大豆の栄養を活かせるのは発酵食品だけ

大豆のもつ3つの反栄養素

  1. フィチン酸塩
  2. 酵素阻害物質
  3. ゴイトロゲン

は、発酵させることで分解されます。歴史的にも日本で大豆を未発酵の状態で食べるのは豆腐と枝豆くらいのもので、あとは発酵させて摂取していますよね。

豆乳や豆腐、枝豆は加熱処理をされているので反栄養素の多くは減っていると考えられますが、発酵させた食品ほど安全とは言えません。きな粉も同様です。

気をつけるべきは大豆粉です。大豆粉は炒ってから粉にするきな粉と異なり、火を通さずに乾燥させただけの大豆を砕いて作られます。このため大豆粉は反栄養素の塊と言えます。粉なので一度に使う量は少ないとはいえお勧めはしません。

積極的に大豆を摂取するなら、大豆発酵食品である、納豆、味噌、醤油がよいでしょう。

メリットとデメリットがある豆乳との付き合い方

豆乳には健康・美容・ヘルシーといういいイメージありますが、これまでみてきたように好ましくない面もあります。豆乳のもつ健康リスクをまとめると、

  • フィンチン酸によりミネラルの吸収が阻害されるリスク
  • 酵素阻害物質による消化不良
  • 精子数減少や精子の運動能力が低下するリスク
  • 甲状腺へのヨウ素取り込みを阻害される

となります。

これらの特徴はどちらかというと「豆乳」ではなく、未発酵大豆食品すべてに共通する問題といえます。

豆乳特有の問題としては、未調整では飲みにくいため、カロリーの高い調整豆乳を選ぶケースがあることです。

調整豆乳は飲みやすいですがカロリーが高いため、低カロリーのタンパク質を摂るのが目的なら豆乳である必要はないんですよね。

そういった事情からアメリカでの豆乳消費量は下落しており、植物性ミルクとしてはアーモンドミルクが取って代わっています。

アーモンドミルクの台頭は、豆乳よりもさらにカロリーが少ないためという理由が大きいようですが、リスクや未調整での飲みにくさも影響しています。

 

骨粗鬆症予防や更年期障害、糖尿病リスクに悩んでいる方は、症状改善期待して豆乳を積極的に飲みたくなるとは思います。その気持ちは分かりますが、一度にたくさん飲んだからといって効果が表れるわけではありませんし、摂りすぎれば逆効果となるので気を付けましょう。

たとえば牛乳よりもヘルシーだからと牛乳の代わりとして豆乳に置き換えるのは、むしろデメリットが多くなるかもしれません。

 

わが家ではほどほどの摂取のために、1週間に1本、ローテーションで飲んでいます。

豆乳製品の賞味期限はおおむね3ヶ月と長いことを利用して、非常用の飲み物として6本ほどストックしています。ストックのうち古いものから順に飲んでいくことで、ほどほど摂取と非常食の一石二鳥を狙っています。

豆乳に限らず、健康にいい食品はメリットとデメリットを理解した上で、うまく付き合っていきたいものですね。

参考
[a]食品安全委員会:大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
http://www.fsc.go.jp/sonota/daizu_isoflavone.html
[1]大豆から豆乳・豆腐が生成する機構とそれに影響を与える諸因子
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/55/2/55_2_39/_article/-char/ja/
[2]甲状腺:最新・専門の検査/治療/知見②[専門医 長崎クリニック(大阪)] https://www.nagasaki-clinic.com/thyroid2/#goitrogen
[3]ゲニステインとエストラジオールが生殖器の発達に及ぼす影響 : 大豆ベースの餌によって飼育した母マウスから生まれたオスの性成熟への影響
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003963613
[4]Soy food and isoflavone intake in relation to semen quality parameters among men from an infertility clinic. – PubMed
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18650557
[5]Effects of Genistein Isoflavone (4′,5′,7-Trihydroxyisoflavone) and Dexamethasone on Functional Characteristics of Spermatozoa
http://online.liebertpub.com/doi/abs/10.1089/10966200152053695
[6]Soy protein isolates of varying isoflavone content do not adversely affect semen quality in healthy young men – Fertility and Sterility
http://www.fertstert.org/article/S0015-0282(09)03594-8/fulltext