競走馬の十戒 犬猫の十戒を改変

馬仔馬親子牧場

 

ツイッターで話題になっていた日本愛玩動物協会の犬の十戒・猫の十戒をもとに、競走馬の十戒を書いてみました。

 

犬の十戒・猫の十戒 | 公益社団法人日本愛玩動物協会 長崎県支所

 

猫の十戒

■ 猫の十戒
第一戒 私の生涯はだいたい15 年くらいしかありませんが、たまに20 年以上生きてしっぽが裂けます。ほんのわずかな時間でもあなたが離れていると腹が立ちます。私が家族になってやるので、そのことを覚悟しなさい。

第二戒 あなたが私に望むことを理解するつもりはありません。待っても無駄です。

第三戒 私を崇拝しなさい。私にとってそれが一番大事なことなのです。

↑こんな話

 

犬の十戒には元ネタがあり、広く流布しています。猫の十戒はそれを改変したもののようです。

猫の十戒を読んでほっこりした人からは叱られるかもしれませんが、産業動物・経済動物である競走馬に置き換えたらどうなるか考えてみました。

 

競走馬の十戒

 

第一戒 ぼくたちの生涯はだいたい 4年 で終わります。寿命は 20 年から30 年ですが、重賞に勝って繁殖入りできなければ、10歳まで生きられないでしょう。私に優しくする前に、どうかコンビーフになったときのことを考えておいて下さい。

 

第二戒 馴致が進み、僕が人を乗せることを許すするまでには、少し時間がかかります。

第三戒 私にとって一番大事なことは、あなたから信頼してもらえることです。

第四戒 私のことを朝早くから連れ出して走らせたり、長時間馬運車に乗せないでください。あなた方は座っていられるけれど、ぼくたちは立ったままです。

 

第五戒 ぼくにちゃんと話しかけてください。あなたの話している言葉の意味はわからなくても、話しかけてくれるあなたの声はよくわかるのです。

第六戒 あなたが私にどんなふうにしてくれたか、それを私は絶対に忘れません。

第七戒 私をたたいたりする前に、ぼくがあなたを蹴ったり噛んだりしなかったことを忘れないでください。ぼくの後足はあなたの頭を砕くくらいの威力があります。

 

第八戒 ぼくが言うことを聞かないと怒る前に、なにか原因があるのではないかと考えてみてください。食事はちゃんとしているか、かんかん照りの日なたに置き去りにしてないか、年を取って体が弱ってきていないか、と。

 

第九戒 ぼくがケガをして予後不良になっても、どうか優しく世話をしてください。あなたがケガを負った時と同じようにしてください。

 

第十戒 ぼくが種牡馬になれず、乗馬クラブにも引き取られることなく、旅立つその時を安らかに迎えられるように、どうか最期まで一緒にいてください。コンビーフになるからって、私を独りぼっちで逝かせたりしないでほしいのです

だって、私はあなたが大好きなんですから。

 

競走馬の現実

競走馬はケガをして治癒の見込みがなければ予後不良(治療しても回復が見込めない、もしくは結果が思わしくないと予想されること)として薬殺されます。薬殺処分の場合は食用には供されません。

しかし現役時代の成績が振るわず、種牡馬や繁殖牝馬になれなければ乗馬クラブに行くか、もしくはコンビーフになります。

 

競走馬は厩務員からはかわいがられていると言われますし、実際愛情を持って接していることも知っています。しかし競走馬の8割は胃潰瘍だそうです。原因はストレス。

競走馬総合研究所が調査(1996年)を行ったところ、日本の競走馬の85.4%に胃潰瘍があることが明らかになった。欧米の馬も同じような割合であることが報告されている。

馬の胃潰瘍(JRA競走馬総合研究所)

 

馬用の胃潰瘍治療薬も販売されていますが、2016年の段階では9割が胃潰瘍ということです。

先日、日本ダービー2016が開催されましたが、競走馬の約90%が胃潰瘍を保有しています。当研究では、健康な馬の飲用水を水道水から電解水素水に変更し、一定期間を経た後、実験的に胃潰瘍を発生する薬を投与したところ、水道水に比べ胃潰瘍発症の有意な抑制が見られました。現在、国内の馬の飼養頭数は7.4万頭と言われており、今後、畜産分野にも電解水素水生成器の拡がりが期待されます。

電解水素水の飲用による馬の「胃潰瘍」発症予防効果が明らかに(日本トリムのプレスリリース)

 

競走馬は幼いころに親から引き離され、小さい頃から馴致される。そして早朝から訓練を繰り返させられる。ご褒美にたまに放牧はあるけれど、オーナーの都合によっては酷使される。

成績が振るわず繁殖入りできなければ、コンビーフ。運良く乗馬クラブに引き取られればいいですが、それでも歳を取って乗馬にも適さなくなったらどうなるか。

 

2015年に生まれたサラブレッドは6,800頭あまり。このうちのどれだけが天寿を全うできるんでしょうか。

 

ムチはたぶん痛くない

余談ですが、イギリスでは競馬でのムチの使用回数が規制されていますが、馬はあまり痛がっていないと思います。

ジョッキーの使うムチは見るからに痛そうですし、叩く強さも経験してはいないので想像でしかありません。

けれど夏場のアブをはたくためにぴしゃぴしゃしゃ振っている時の馬の尻尾、顔や腕に当たるとめちゃくちゃ痛いです。でも馬は気にも止めてません。

また、乗馬クラブにいるズブい馬は、下手な人にはうまく扶助できず、腹を蹴りまくります。その際、拍車のさきが当たって腹の皮が剥けて血が出ていることもあります。それでも涼しい顔をしています。予想できる痛みは意外と平気そうです。

 

動物愛護の難しさ

人間の都合で命の重さを決めるのは人間の抱える業です。ですからそれ自体はもう仕方のないことです。

生命のの進化は生存に有利になる方向に進むのが自然です。しかしサラブレッドは早く走るためだけに品種改良されてきたため、走る能力には長けている者の、故障に弱い。不自然な進化をさせていると言えます。

しかし馬だけではなく、ウシや犬猫といった家畜化した動物は1000年、2000年といった歴史を通してことごとく品種改良してきているのだから、その良し悪しも口にはできません。

 

犬猫にだけ過剰に入れ込んだ表現をするのも、身近な存在に感情を移入するのは自然なことです。だから普通の動物好きの人が猫の十戒を読んでほっこりするのは気になりません。

 

しかし動物愛護に携わる組織が、同じ哺乳類で感情もはっきりしている馬は放置で、犬猫といった特定の動物に過剰に入れ込んだものを記載しているのをみると、ナイーブさを感じてしまいます。

 

猫の十戒は面白いんで動物愛護に携わる団体はそういうことを書くべきではないとは思いません。

しかし命の重さや人と家畜のあり方を突き詰めて考えたら、そうそう簡単にはものが言えなくなるはずです。

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