総務省2017年4月1日通知から『ふるさと納税』の問題を読み解く

雑学、雑感

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総務省が2017年4月1日にふるさと納税の「返礼品(お礼の品)」の限度額を3割に抑える方針を打ち出しました。

「モノで釣る」ことが自治体の競争なのか?という疑問視する声が高まったことや、高額のお礼の品を「提供」する過当競争となっていたことから、総務省が動いたものです。

引用元ふるさと納税に係る返礼品の送付等について

都道府県知事に送られた通知に書かれた内容は当たり前のことばかり。

この通知は強制力のないものですが、ふるさと納税の抱える問題点が分かりやすくまとまっているので、通知の内容を順を追って見てみましょう。

ふるさと納税の基本的な性格

ふるさと納税の趣旨の説明です。

第1 ふるさと納税の募集に関する基本的事項
寄附を受ける地方団体は、返礼品の送付を強調してふるさと納税を募集することを慎む
一方、ふるさと納税の使途(寄附金の使用目的)について、地域の実情に応じて創意工夫
を図り、あらかじめ十分な周知を行って募集するとともに、寄附金を充当する事業の成果
等について、公表や寄附者に対する報告を行うなど、ふるさと納税の目的等が明確に伝わ
るよう努めること。

返礼品は「お礼」であって対価ではないことを明示しろ、と言っています。

これは「商品」から寄付を募集している自治体を検索できたり、人気ランキングがあるポータルサイトに登録した時点で机上の空論です。

返礼品が対価でないことを周知するには、商品ランキングがある検索のできるポータルサイトへの登録をやめるしかないですね。

返礼品のあり方

ありがとう thank you

返礼品のあり方の項は少し長いので分割します。

第2 返礼品のあり方
ふるさと納税について、寄附金が経済的利益の無償の供与であること、通常の寄附金控
除に加えて特例控除が適用される制度であることを踏まえ、各地方団体がふるさと納税に
係る周知、募集等の事務を行う際には、次のように取り扱うこと。
1 返礼品の価格等の表示について
「返礼品の価格」や「返礼品の価格の割合」(寄附額の何%相当など)の表示(各地
方団体のウェブサイトや広報媒体等における表示のみでなく、ふるさと納税事業を紹介
する事業者等が運営する媒体における表示のための情報提供を含む。)など、返礼品の
送付が対価の提供との誤解を招きかねないような表示により寄附を募集する行為を行
わないようにすること。

お礼の品が寄付額の%分に当たるか、という表示は控えるよう促しています。いくら得になるかといった情報は出すなということです。

「対価」だと思われたら文字通り還元率のいい自治体の品が上位に来ますし、趣旨にも反します。

しかし寄付金の額によってもらえるものが決まっていて(明示されていて)、それが実用的なものなら対価に当たるという考え方もできます。玉虫色にしたいところかもしれません。

 

2 ふるさと納税の趣旨に反するような返礼品について
(1) 次に掲げるようなふるさと納税の趣旨に反するような返礼品は、換金の困難性、転
売防止策の程度、地域への経済効果等の如何にかかわらず、送付しないようにするこ
と。
ア 金銭類似性の高いもの(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイ
ル、通信料金等)
※1 使用対象となる地域や期間が限定されているものを含む。
※2 ふるさと納税事業を紹介する事業者等が付与するポイント等を含む。
イ 資産性の高いもの(電気・電子機器、家具、貴金属、宝飾品、時計、カメラ、ゴル
フ用品、楽器、自転車等)
ウ 価格が高額のもの
エ 寄附額に対する返礼品の調達価格の割合(以下、「返礼割合」という。)の高いもの
(2) (1)エの返礼割合に関しては、社会通念に照らし良識の範囲内のものとし、少なくと
も、返礼品として3割を超える返礼割合のものを送付している地方団体においては、
速やかに3割以下とすること。
(3) ふるさと納税の趣旨を踏まえ、各地方団体は、当該地方団体の住民に対し返礼品
を送付しないようにすること。

この項がニュースにもなった「返礼品の原価は3割以下に」の部分。

「プリペイドカード、商品券」がだめって当たり前のことなのですが、提供していた自治体がありましたね。

「言われないと分からない」自治体が多かったということの裏返しです。行政までやったもの勝ちになったら、利害調整の場である行政の役割を担えないでしょう。

念押しの部分

ここからは念押しの意味が強いですが、確認しておきましょう。

第3 一時所得について
ふるさと納税に係る寄附金控除の適用が、地方団体に対する寄附金額の全額(2,000 円
を除く。)について行われるのは、当該寄附が経済的利益の無償の供与として行われてお
り、返礼品の送付がある場合でも、それが寄附の対価としてではなく別途の行為として行
われているという事実関係であることが前提となっているものであるが、その場合におい
ても、返礼品を送付する団体は、当該返礼品を受け取った場合の経済的利益については一
時所得に該当するものであることを返礼品の送付の際などに、寄附者に対して周知するこ
と。

一時所得になることは一般的に説明されていますね。これをしなければ問題になってしまう。

 

第4 ふるさと納税の募集、周知等の事務に要する経費について
返礼品競争の過熱などを通じて、各地方団体において、返礼品の調達費用を含めふるさ
と納税の募集、周知等の事務に要する経費が増えることは、財源に限りがある中で、住民
福祉の増進のために必要とされる施策に充てられる地方団体の財源が実質的に減少する
ことに繋がることとなる。こうしたことから、各地方団体は、これらの経費の支出に当た
っては、第2の各事項に沿って対応するとともに、公益上の必要性等を十分精査すること。

お礼の品の調達費用だけでなく、PRのための事務経費についても言及しています。

自治体が「ふるさと納税」を獲得するのに金をかけずに頭を絞るべき部分と言えます。高額の「お礼の品」を用意してポータルサイトに登録。高額のモノで釣るのは頭を絞ってないことの裏返しです。

商品で釣ることを自治体間の競争とは言いませんね。

 

第5 個人情報の管理について
寄附を受けた地方団体においては、ふるさと納税に係る申告特例通知書において、本人
のマイナンバーが正しく記載されていることを複層的に確認するなどマイナンバーの適
切な取扱いを含め、寄附者の個人情報を厳格に管理すること。特に、返礼品の送付に関し
外部委託等を行う際には、外部委託等に伴う個人情報漏えい防止対策を徹底すること。

個人情報についてはこれに限らず、でどこでも言われることですね。静岡県湖西市でマイナンバーが漏洩したケースがありましたが、ミスによるもの。

総務省はあたりまえのことをいっているだけ

本音と建前の部分はあるにせよ、総務省の通知はふるさと納税の趣旨に則って運用する前提のまっとうなことしか書かれていません。

こういった通知が出されるということは、ふるさと納税本来の意義を見失った自治体があるということ。

「なぜ公務員や首長のような行政のプロにこれが分からないの?」と聞きたくなるところです。おそらく分かっていても止められなかったという自治体もあるのでしょうが…。

高額な返礼の品を用意して返礼品競争に乗らず、歳入減にも耐えた自治体こそ、行政サービスや税金・寄付についての見識をもっているといえるでしょう。

自治体本来のサービスはその地域に住む納税者のための行政サービスを提供することです。寄付金はありがたく受け取って有効に使えばいい。そして結果を広報すればい。

政治・行政の究極の役割は利害調整です。行政と営利企業を同一視する論調もありますが、全くの別物です。

利用するだけの「寄付者」には関係ないことですが、ふるさと納税への取り組みは自治体の首長の考え方の一端を見ることができますね。

引用元ふるさと納税に係る返礼品の送付等について