保育士はハイリスクローリターンだから人手不足
待機児童の問題と保育士不足がニュースで取り上げられるようになって久しいこのごろ。
保育士不足の原因の一つには保育士資格をもっていても、保育園で働かない人の割合が増えているのだとか。
保育士としての就業を希望しない理由としては、賃金や休暇の取りづらさといった待遇の問題とともに、責任の重さが上位となっています。
待遇の問題は給与を上げれば済みます。どこからその金を捻出するんだ、という問題はあれど、解決事態は可能です。人数が増えれば一人あたりの負担も減るので、体力的な問題や休暇も取りやすくなり、待遇は大幅に改善されます。簡単な話なんです。
待遇面での問題が原因の人手不足は、「安く働く人がいない」というだけのことです。賃金を上げたら解消できます。暴論ではありますが、金で解決できることなんです。
その賃金で働くひとがいなければ賃上げするのが普通でしょ?議論するなら、どうやってその金を捻出するかに集中すればいいんです。
ただ、一方の事故のリスクや責任の重さはそうはいきません。人手があれば事故を防ぐことはできますが、どうしても不幸な事故は起こりえます。子どもの年齢が低ければ低いほど事故のリスクは高まり、避けられない部分は出てくるでしょう。
過失による事故が生じれば罪を償うのは当然です。しかし、ある程度組織だった体制を敷くべき保育所で生じた事故で「個人」が過失致死を問われるのは、やはりリスクが高いと言えます。
また、責任の所在が分からない原因不明の死亡事故で刑事責任を問われなかったとしても、親からは責め立てられます。
保育士の重い責任に賃金は見合うのか?
2006年から2008年ごろにかけて、保育園・幼稚園での事故死の報道が多数なされました。ほんの10年前のことです。
名前はでる、過失致死で起訴される、職は当然失う。子どもから目を離さないというのは当然の義務とはいえ、個人ではどうしてもミスは生じます。保育所の体制が整っていれば避けられたかもしれないことも、個人の責任となることもありえます。
個人として刑事責任を問われなかったとしても、当然親からは責められます。
そして、親の憤りとは無関係に、死亡させてしまった、もしくは事故を防げなかった保育士は申し訳なさとやるせなさに押しつぶされることになるでしょう。
保育所の0歳児の事故件数は家庭よりも低いのに対し、1~2歳の死亡事故は保育施設のほうが高くなっています。
この原因としては、国の基準が0歳児に対しては幼児3人に対して保育士1人を必要としているのに対し、1歳児は6人に対して保育士1人であることが原因と考えられています。もし一歳児に必要な保育士の人数を増やすのであれば、1歳児の保育料も高くなります。
結局のところ、リスクを減らすのに必要なのは金ということになります。
事故の発生率は減らすことはできる
下の動画は2009年のANNニュースです。
認可外の保育施設で睡眠中などで生じる死亡事故の発生率は、認可保育所に比べて十数倍も高いという結果だったと厚生労働省の発表したというもの。
認可外保育での死亡事故の確率が高い理由は保育体制の不備や対策不足が要因と専門家は指摘しています。
認可保育の事故率が無認可保育にくらべ10分の1ほどだとするなら、保育体制次第では事故を減らすことはできるということになります。
子供の死亡事故10倍以上 認可外の保育施設 – ANNnewsCH
この報道は8年前のものなので、今は改善していると思うでしょ?
ところが昨年2016年3月11日には、うつぶせ寝での死亡事故が発生しています。
寺町東子 弁護士×安田菜津紀「『うつぶせ寝』が原因とみられる死亡事故の報告書について」 – JAM THE WORLD J-Wave
1歳二ヶ月だった幼児がお昼寝の際、よく泣いて他の子が寝られないという理由で別の部屋で寝かされ、なかなか寝付かないことからうつ伏せに寝かせた。
そして事故を確認するまでの2時間の間に死亡していた。
2016年の段階では、1歳未満ではうつ伏せで寝かせることは禁止されていましたが、この幼児は1歳だったために指針には沿っています。
寝かしつけてから2時間も確認しなかった理由は不明。保育士も施設長も、幼児保育の経験が浅かったという指摘がなされています。
こういった事故があると、親も認可保育がいいと思うのは当然です。そして親と同様に、保育士もリスクが相対的に高い認可外は避けたいでしょう。
保育士だって生活がかかるんだから、やりがいや子どもが好きっていうだけじゃやってけないわけで。
リスクの高さをそのままにしておいて、保育士が足りない、求人倍率が高いままって。
そりゃそうだろうとは思いませんか?
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