微量金属作用、金属のもつ殺菌作用〔気になる言葉〕

雑学、雑感

銅製ポットケトル

銅は熱の伝わり方がよいため鍋やヤカンに用いられていますが、それと並んでよく利用されるのがキッチンシンクの排水口のゴミ受けや三角コーナーですよね。

銅製品がカビの生えやすいところにも用いられているのは、銅には強い殺菌・除菌効果があるためです。

銅の除菌効果を利用した例としては

  • 銅製のシンクバスケット(排水口のゴミ受け)や三角コーナーを使うとヌメリが抑えられる
  • 銅(十円玉)を靴に入れておくと匂いが取れる
  • 手を触れることの多いドアノブを銅製のものにする
  • 池や水たまりに銅を入れてボウフラ避けにする

などがあります。

銅はほんの微量でも菌類に効果を発揮するため、殺菌力を示す金属の働きを微量金属作用といいます。

「金属作用」という名前の通り、抗菌効果を発揮する金属は銅ばかりではありません。銀、真鍮を始めとして、白金、金、銅、鉛、水銀、バリウムなどなど多数の金属が微量金属作用をもつことが知られていて、実際に活用もされています。

銅が抗菌目的に用いられる理由は、物質としての安定性やその性質や価格の手頃さからのようです。

考えてみると銀イオンの配合されたワキガ用スプレーなど、抗菌アイテムには銀が含まれていることが多いですね。

微量金属作用の発見と原理

金属が強い殺菌効果を示す「微量金属作用」は1893年にスイスの植物学者カール・ネーゲリ(カール・ヴィルヘルム・フォン・ネーゲリ Karl Wilhelm von Nägeli)によって発見されました。

ネーゲリは池に生えたアオミドロ(藻)を枯れた原因が、当時は検出できないほど微量の銅イオンにあると見抜きました。

ネーゲリは1891年に亡くなっているため、研究結果が発表されたのが1893年ということだと思われます。

銅はレジオネラ菌やMARS、O-157などの増殖を抑える効果があるなど、強力な抗菌力があります。

ほんのわずかな金属が、なぜこのような強い殺菌力をもつのかはよく分っていません。

タンパク質や酵素に対して作用するため、菌類の細胞を壊してしまうと考えられてはいますがいまいちはっきりしません。

例えば日本銅センターでは、二通りの説明をしています。

銅イオンによる細菌や微生物へのへの影響

詳しいメカニズムはわかっていませんが、人や動物が中毒症状を起こすのと同じで、細菌や微生物の中に許容量を超えて溜まった銅イオンが、さまざまな酵素の働きを邪魔するようです。

銅がもつ微量金属作用とは何?(Copperbook日本銅センター)

 

一方日本銅センターのサイトでは、OH(ヒドラオキシラジカル)が発生して、その酸化作用が殺菌力に繋がっているとしています。

Cu→Cu+→Cu2+に伴い、H2O→H2O2→OH・+OH-ヒドラオキシラジカルが強い殺菌力を発揮するというのが当該メカニズムとして使われています。

抗菌・殺菌について(日本銅センター)

 

同じ日本銅センターの管理しているサイトでも説明が異なっています。方や金属の毒性を、もう一方は酸化力を理由として挙げています。

OH(ヒドロキシラジカル)
プラズマクラスターでも用いられている殺菌作用のある電子的に不安定な状態の分子。他の物質から電子を奪い取る力が強く、タンパク質などから電子を奪って分子構造を破壊し、自らは安定した分子になる

 

実際の利用

実際に微量金属作用がどう利用されているのかというと。

抗菌作用を期待した家庭向け銅製品として、台所や風呂などの水回りの器具によく使われています。これは雑菌が繁殖しやすいところでの殺菌に極めて高い効果があるからです。

十円玉を三角コーナーや排水口のキャッチャーに入れておくとヌメリが減るのはすぐに実感できますよね。

また、花瓶などに十円玉を入れておくと水が腐らないので長持ちします。

池や水たまりなど、流れが少ないところに入れておくと、ボウフラや藻が発生しないことが分かっています。この場合は銅もそれなりの量が必要になるので、ある程度量を計算して用いる必要があります。

変わったところでは、銅繊維入りの靴下があります。これは臭いの元となる雑菌を抑えたり、水虫を予防できます。確かに水虫対策にはうってつけです。

植物や魚類は銅に弱いこともあるので、利用には注意が必要なこともあります。

 

金属臭の理由

金属は基本的に無臭です。銅をピカピカにして鼻を近づけても何も臭ってきません。

しかし指などで触ると、とたんに「銅」臭くなる。この現象について説明しているサイトがありました。

どんな反応が起きているのか、しかとは分からぬが、比較的分子量の小さいものが生成するのであろう。そうでなければ臭いにくいはずだ。おそらく、皮脂の中に含まれる脂肪酸の二重結合が切れる反応が起こっているのではないかと思う。

金属は単体でも、酸化物でも触媒になりうるであろう。鉄工所に行くと鉄と切削油との反応で独特の臭いがする。これはどの鉄工所も同じ臭いである。

金属の臭い?(プラグマティックな化学)

金属臭の原因。このあたりのメカニズムが分かると面白そうですね。

銅の毒性

銅は栄養素として必須ですし、通常の摂取では問題にはりません。しかし銅にも毒性はあるため、国により摂取上限も設けられています。

日本銅センターでは、銅鍋でカレーを煮込んでそのままにしておくと、酸性度が強いため銅が溶け出すリスクを指摘しています。

酸性の食べ物は多々ありますが、カレーのようにひと晩二晩とは置かないので、リスクが表には出にくいのかもしれません。

銅は比較的溶け出しにくく安定していますが、銅鍋に酸性の食べ物を放置するのは避けたほうがいいです。

また、東京都の食品安全情報サイト『食品衛生の窓』では、炭酸飲料やスポーツドリンク、果汁の多いジュース、乳酸菌飲料を金属製の水筒などに入れるのは気をつけたほうがいいとしています。

食品衛生の窓 東京都

 

原理はわからないけれど間違いなく役に立つ

微量金属作用の原理は分からないけど、銅の抗菌効果は確かにすごいです。

毒性の強い重金属、例えば水銀や鉛などは微生物にも効きそうなのは分かりますが、少量の銅にO-157にも対抗できるだけの殺菌効果があるのは不思議な気がしますね。

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