耳障りと耳触りと耳あたり なぜか耳あたりが一番多い

雑学、雑感

猫耳触り耳障り

「みみざわり」ということばは音で聞くと同じだけれど、漢字を当てると「耳障り」と「耳触り」の二通りの意味になります。

「耳障り」は「聞くと不愉快になる音そのものや、事柄(内容)」のこと。まあ耳にしたら気に障ることですよね。

「障る」は癪に障るとか舌に障るなど、不愉快になることなのでポジティブな意味は皆無。

だから「耳障りがいい」とはならない。

 

一方、「耳触り」だと「聞いた時の感じや印象」なので、悪い意味にもいい意味にも使えます。手触りだとか肌触り、舌触りなど、五感に用いられるので、耳触りはむしろ自然な表現です。

「耳と音は直接接触していないじゃないか。鼓膜触りにすべき!」なんて人はいないでしょう。

 

だから「耳触りがいい」は問題ない表現のはず、なのですが。
誤用の印象が拭えないのも事実。

「耳触り」を漢字で目にすれば素通りしてしまうほど普通の表現ですが、話し言葉では否定的な「耳障り」が思い浮かぶために違和感が生じるのでしょうね。

耳触りと耳障り、どちらが一般的か

ならば「耳ざわりがいい」をどちらの意味として捉える人が多いのか。

「耳ざわりがいい」という言い方について、「おかしい」と答えた人が、1980年の有識者アンケートで89%、また世論調査では1989年が59%、1992年が47%となっており、「おかしい」と思う人がしだいに減ってきています。それでも半数近くの人が、この新しい言い方に抵抗感を持っていることは、放送のことばとしてまだ市民権を得ていないといえます。

「耳ざわりのいい音」は誤用では? | NHK放送文化研究所

1992年には「耳ざわりがいい」に違和感を覚える人は半分以下になっていることを考えると、今はそこまで差はないと思われます。Google の検索結果では、「耳障り」が358万件なのに対し、「耳障りがいい」は237万件。「耳障り」のほうが5割ほど多くなっていますが、おそらく「耳障り・が・いい」という判定も含まれるので、実際はもう少し差は小さいかもしれません。

  • 耳障り    …   358万件
  • 耳障りがいい …   237万件
  • 耳触りがいい …   12万件

「耳触りがいい」は極端に少なく12万件。あまり一般的ではないようです。

「耳触りがいい」は新語ではない

ただ、「耳触りがいい」は最近できたことばというわけではありません。

俺らが大事の両親につらい思いをさせ涙をこぼさせるのは,あのいつでもその耳触りのい声を出して,スベスベした着物を着て,多勢の者にチヤホヤわれている者共ではないか?

(宮本百合子「貧しき人々の群」大正5年)

「耳ざわり」は「障り」か「触り」か – 文化庁広報誌

もっと前の用例も見たことがあるので、新語とみなすのは無理です。あまり使われてこなかった用法、というのが正しいでしょう。

 

伏兵「耳あたりがいい」

耳障りと耳触りで終わればよかったのですが、もう一つ、「耳あたりがよい」を最近よく見聞きします。

おそらく「耳障り」の対義語として使われています。話言葉では「耳触りがいい」は「耳障り」を思い浮かべる人が多く誤用と言われがち。無用な誤解を避けるために「耳あたりがいい」が生まれたのでしょう。

「口あたりがいい」「人あたりがいい」の延長で考えれば非常に分かりやすく、しかもネガティブ・ポジティブ両方に使えるので便利。

しかしこれは言葉そのものがないので誤用、なのですが。

「耳あたりがいい」の Google 検索結果は3,900万件。

耳あたりがいい … 3,900万件

「耳障り」の10倍もの結果となっています。「耳あたり」もほぼ同数なので、おそらく「がいい」とセットで使われているのでしょう。

耳触りか耳障りかを考えるより、もう「耳あたり」でいいのかも。

 

おそらく「耳あたりがいい」が増える

個人的には肯定にも否定にも使える「耳あたりがいい」が一般化すると思います。

かつては否定的な意味と思っている人が多かった「全然」は、今では「全然OK」「全然大丈夫」と耳にしても気にしなくなった人が多いと思います。

「全然」は用法が異なるだけで同じ語だったためにそのまま生き残りましたが、「みみざわり」の場合はことばそのものが異なるため少々厄介。耳触りと耳障りを気にしながら使うのは煩わしいので、しがらみのない語が選ばれるだろうなと思っています。

用法が混在するうちは違いが気になりますが、みんなが使っていれば意外とすぐに慣れちゃうんですよね。

かつては看護婦と呼ばれていた看護師ですが、どんなに年配の人でも今の呼び方に違和感を持ってる人は珍しいはず(公的に定められたという特殊事情はあるけれど)。