スポーツは体に害悪?健康になるための運動とは?
スポーツをやっている人は体格もよく健康的に見えますよね。ひきしまった体のラインも美しい。
その一方で、実は突然死が多いことをご存知ですか?
突然死の発生率に関するはっきりとしたデータはないものの、一般人の参加するマラソン大会などでは0.5〜1 件/10 万人なのに対し、学生の部活動やスポーツ選手の突然死は1〜2/10 万人と推測されています。激しい運動を日常的に行う人の割合が、実に倍となっています。
激しい運動を日常的に行うために、肉離れや骨折といった外傷が多いのは分かりますよね。試合で選手同士が接触して、打ち所が悪くて不運にも命を落とすことがあることも理解はできます。
しかし突然死の原因はこういった物理的な「怪我」ではなく、循環器系(心臓とその周辺)が多く、激しい運動が心臓に負担をかけているからだと考えられています。心肺機能が高いスポーツ選手が、循環器(心臓や血管)による疾患で亡くなると聞くとちょっと意外な感じがしますが、激しい運動はリスクが高いことは事実のようです。
かつては生活習慣予防の適度な運動としてジョギングが勧められていましたが、近年ではウォーキングが推奨されるようになっています。それも心臓に極度の負担をかけることが好ましくないと考えられるようになったためです。
スポーツ選手の突然死の原因と対策について見てみましょう。
スポーツ選手の突然死の原因
スポーツと突然死
- スポーツにおける突然死の基礎疾患は、半数以上が心血管系(循環器)の疾患である。( 村山正博ら.DMW日本語翻訳版.1993 )
- 特に若年者の突然死の原因としては、肥大型心筋症の頻度が高く、次いで冠動脈疾患が多い。( Maron BJ, et al. Circulation. 1996 )
- また、40歳以上の対象を含む報告では、冠動脈疾患などの虚血性心疾患の頻度が高い。( Virmani R, et al. Cardiol Clinics. 1997 )
と報告されています。
虚血性心疾患というのは狭心症(きょうしんしょう)、心筋梗塞(心筋梗塞)といった症状のことを指しています。身近な言葉で言えば心不全です。余談ですが、心不全は病名ではなく、心筋梗塞や狭心症といった心臓がうまく働かなくなった状態を指しています。
心臓は一定の間隔で脈打っています。トクン、トクンという鼓動は心臓というポンプが働いている音で、新鮮な血液を全身に送り出している証です。心臓では血液を取り込んでは送り出してという作業が常に行われていますが、鼓動のリズムが乱れてしまうとポンプがうまく作動しなくなってしまいます。
この状態が心不全と呼ばれます。心不全になると血液が送り出せなくなってしまい、そのままにしておくと死に至ります。
学校における突然死
日本スポーツ振興センターのデータによると、学校における突然死の71%が心臓系疾患で占められているとされています(平成11年から平成20年まで)。
そして小中高と、年齢が上がるにつれて運動中・後の突然死が増えていき、高校での突然死のうち65%を占めるまでになります。
運動、体に悪いです。正しくは、体に悪い運動の仕方があるというべきでしょう。何事にもリスクはありますし、体に負担をかけるのは運動の一側面なので、必ずしも悪いとは言えません。
ただ、リスクがあることは事実で、それゆえに適切な指導が必要な理由でもあります。
接触事故による心不全
心不全が起こる原因はさまざまですが、スポーツ選手同士の接触事故で発生するのが心臓震盪です。激しく鼓動している状態で心臓が衝撃を受けるとリズムが狂い、ポンプがうまく働かなくなってしまうのです。動きたくても動けない状態になっています。この時に外部からショックを与えてやると、リズムがリセットされてポンプの機能が戻ることがあります。
そのために使われる機械が除細動器です。ドラマなどで心臓が止まったら二つの電極を当てて、「離れてー」といってドンッ!とショックを与えるあれです。
役所や学校に設置されているAEDは自動体外式除細動器といい、書かれている通りにすれば一般人でも使えるようにしたものです。
AEDがスポーツ施設に設置されるようになったのも、スポーツ中に心不全になることがあるためでもあります。
循環器(心臓)そのものが原因で起きる突然死
体の内部が原因で生じる突然死の多くは、動脈硬化や血栓が影響していると考えられています。
激しい運動をすると心拍数が上昇して血圧が上がるのは正常なことです。しかし血栓や動脈硬化が原因で血液の流れが悪くなっている状態になっていると、血圧が必要以上に上がってしまいます。
血圧が上がって血管にできていた血栓のプラークが破壊されると、急性心筋梗塞につながります。また、動脈硬化によって血液の流れが悪くなっていると不整脈につながるとも言われています。
プラークや動脈硬化はコレステロールが高い人や糖尿病の人に多い生活習慣病ですが、スポーツをしていて糖尿病やコレステロールには無縁な人がなぜ血栓や動脈硬化を患うのでしょうか?
激しい運動は動脈硬化・血栓ができる原因になることも
スポーツ選手が動脈硬化や血栓を患うのは、活性酸素が影響しているとする説があります。。
活性酸素は体内に侵入した微生物を退治するために必要な存在ですが、過剰な活性酸素はわたしたちの体に様々な疾患を引き起こし、老化の一要因と見なされていることもあって、嫌われています。
この嫌われ者の活性酸素、通常の呼吸でもわずかながらも発生しています(取り入れた酸素の2~3%程度)。激しい運動をすると呼吸が激しくなって酸素の取り込み量が増えることになります。その結果、大量の活性酸素が発生することになります。
余剰な活性酸素はSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)をはじめとする抗酸化物質によって還元されて無毒化されているのですが、大量に発生すれば処理が追いつきません。
この大量に発生した多すぎる活性酸素はわたしたちの体に害を与えます。細胞に対して直接的なダメージを与えるばかりでなく、脂質(コレステロールや中性脂肪)と反応して、過酸化脂質をつくります。過酸化脂質は血管の壁について、血管を細くします。そしてその下にある血管そのものを脆くします。その結果、動脈硬化が進行したり血管が細くなって心筋梗塞に結びつくといわれています。
スポーツクラブで水素水が用意されていることがあるのは、運動直後に発生する活性酸素の害が知られてきたためです。水素水に溶けている水素分子はすみやかに帯に取り込まれ、抗酸化作用をしめします。水素水そのものではありませんが、抗酸化作用のあるビタミンCやEを服用したところ、筋肉の損傷が減り、乳酸もったという研究結果があります。
抗酸化作用のある食べ物を摂っていても、一時的に大量に発生してしまうと対処ができませんから、水素水を飲むのは合理的ですね。今のところ大手では3つのクラブが水素水を用意しています。
- コナミスポーツクラブ
- ゴールドジム
- スポーツクラブ ルネサンス
適度な運動なら活性酸素発生は抑えられ、抗酸化機能も活性化
これまで述べたように、激しい運動をすると過剰な活性酸素が発生し、わたしたちの体に悪影響を及ぼします。
では運動はしないほうがいいのかというとそうでもなく、適度な運動をすると抗酸化作用のある酵素SODの生成が量が増えることが分かっています。SODは活性酸素を中和して、活性酸素を減らしてくれます。
いわゆる「適度な運動で免疫系が活性化する」という状態と言えますね。
「適度な運動」がどのくらいか悩むところですが、心拍数が50%~70%程度の息が上がらず、うっすら汗をかく程度の運動を指しています。心拍数の上がり方は人によって異なりますが、ちょっと早めのウォーキングくらいの運動をすると心拍数50%を超える人が多いと思います。
ウォーキングなどの「適度な運動」をするとSODの分泌量は増えるのですが、少し問題があります。活性酸素を中和してくれるありがたいSODの分泌量が25歳くらいから減り始め、40歳をすぎると極端に少なくなってしまうことです。
つまり激しい運動をしなかったとしても、抗酸化作用のある野菜を多めに食べるよう心掛ける必要があります。軽い運動直後でも、水素水やビタミンCやEのサプリ、水素サプリを服用するほうがいいかもしれません。
美容も意識するのなら、20代のうちから抗酸化物質を含むサプリを摂ると若々しくいられる、かもしれません。
まとめ
「スポーツは体に悪い」と言っていた人は昔からいましたが、医学的根拠が伴わなかったために軽んじられてきました。スポーツ選手は健康的に見えますから、直感的に運動は体によさそうに思えます。
しかし、今では激しい動きを伴うスポーツは必ずしも体によくないという見方をする人が増えています。
抗酸化作用のある食べ物を積極的にとってリスクを減らすことはできるので、好きなスポーツを無理してやめる必要はありません。逆に運動が嫌いという人が、健康のためと無理して長距離のジョギングをする必要もないということです。
何事も過ぎたるは猶及ばざるが如し。無理のない運動がよいということですね。
スポーツと活性酸素 会報 No.11
Redox Mechanism of Reactive Oxygen Species in Exercise
Oxidants, Antioxidants, and the Beneficial Roles of Exercise-Induced Production of Reactive Species
Oxygen Consumption and Usage During Physical Exercise: The Balance Between Oxidative Stress and ROS-Dependent Adaptive Signaling
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