やはり人工甘味料はリスクありという研究結果 糖尿病と肥満にも影響あるかも
人工甘味料のリスクに関してこれまでさまざまな議論があり、「リスクがある」とする指摘と研究もあれば「影響なし」という結果もあり、よくわからない状態でした。
人工甘味料の一つ、サッカリンについては、多く摂取している人ほど肥満や糖代謝異常の傾向がある人が多かったという実験結果があります。ただ、アセスルファムやスクラロースについては影響が見られなかったため、「人工甘味料」でくくることは不適当でした。
まずこの論文のタイトルには「Artificial Sweeteners」とあり、各種の人工甘味料で影響が出たかのような印象を与えます。しかし実際には、耐糖能異常を引き起こしたのはサッカリンのみで、飲料などによく使われるスクラロースとアスパルテームでは異常は見られていません。少なくとも、誤解を誘う不正確なタイトルだという批判は免れないでしょう。
批判としてはもっともです。
ダイエット清涼飲料水を飲む人とそうでない人で比較すると、ダイエット飲料水を飲む人のほうが糖尿病発症率が高かったという結果もありますが、これも糖尿病の心配がある人がほどカロリーゼロの甘味料を飲んでいた可能性があるため、はっきりしたことは分かりませんでした。
人工甘味料の影響がはっきりしない中、スクラロースとアセスルファムカリウムが血糖値調整に悪影響を及ぼす可能性を示唆する研究が2018年の欧州糖尿病学会で発表されました。
人口甘味料は腸内フローラを変化させる
欧州糖尿病学会(EASD)の年次総会で、スクラロースとアセスルファムカリウムの摂取が腸内細菌群(腸内フローラ)のバランスを崩し、血糖コントロールにも影響するという研究が発表されました。
実験は15人をプラセボ群と、14人は1日当たり1.5リットルの飲料に含まれる相当量の人工甘味料(スクラロース92mgおよびアセスルファム52mg)を摂取する2群に分けて2週間に渡って行われたもの。
人工甘味料摂取群は1日3回に分けてカプセルで投与した結果を、便試料を採取して微生物の種類と量を確認したもの。
人工甘味料を摂取した群ではインスリン分泌に関わるホルモンに影響する細菌が減少していたことから、糖代謝にも影響が及ぶと考えられるとしています。
論文ではなく発表であること、1.5リットル相当の人工甘味料というかなり多い摂取量のである点には留意が必要です。また、血糖コントロールへの直接的な影響や仕組みがはっきりしないことも指摘されています。
糖尿病治療などで食餌制限している人は別として、一般論として血統コントロールに影響がある可能性が高いので、人工甘味料は避けたほうがいいんじゃない?とは言えるでしょう。
インスリンの分泌が抑制されるとグルコースが脂肪に変換される量が減り、血糖値が下がりにくくなる代わりに太りにくくなるような気はする、のですが、糖尿病のリスクが上がります。
ダイエット清涼飲料水を飲んでも糖尿病は防げない
砂糖と異なり人工甘味料であれば血糖値が上昇しないために糖尿病予防にもなると考えられがちですが、逆に糖尿病の発症率が高いという結果があります。
ダイエット清涼飲料水で糖尿病を予防できるか?
われわれは、人工甘味料の代表的な摂取源であるダイエット清涼飲料水について、習慣的な摂取量と糖尿病発症との関連を検討した3)。富山県の金属製品製造業事業所の従業員を対象に、2003年に栄養調査を行い習慣的なダイエット清涼飲料水の摂取量を調査した。このうち糖尿病のない35~55歳の男性2037人について、毎年の健康診断の結果を追跡して糖尿病発症を確認した。2010年までの7年間で新規に170人が糖尿病を発症した。2003年のダイエット清涼飲料水の摂取量と糖尿病発症との関連を検討すると、ダイエット清涼飲料水を週に1カップ(237ミリリットル)以上飲む人は、飲まない人と比べて糖尿病発症の危険が1.7倍高かった(図1)。
太り気味であったり、糖分摂りすぎといった、もともと糖尿病リスクが高い人がカロリーゼロを多く飲むことが考えられるため、この結果がそのまま糖尿病リスクとは言い切れません。
また、糖尿病とは無関係とする結果もあり答えは出ていません。
人工甘味料一般に言えるかも知れない
これまではサッカリンのみの結果でしたが、今回の研究ではスクラロースとアセスルファムカリウムの血糖コントロールへの影響が明らかとなりました。
人工甘味料による糖代謝への影響はこれまでにも腸内細菌叢(腸内フローラ)の可能性は考えられていました。
最近、人工甘味料による糖代謝の影響を考える上で重要視されているのが腸内細菌叢(腸内フローラ)である6)。マウスにブドウ糖または人工甘味料の一つであるサッカリンを投与すると、サッカリンを投与されたマウスでは、糖負荷試験で耐糖能異常(注)を認めた。サッカリンを投与されたマウスとブドウ糖を投与されたマウスを比較すると、両者では異なった腸内細菌叢の分布を示した。また、サッカリン投与マウスの耐糖能障害は抗生剤を投与すると改善すること、サッカリン投与マウスの腸内細菌叢やサッカリン存在下に培養された腸内細菌を無菌マウスへ移植すると耐糖能障害を引き起こすこと、ヒトにおいてもサッカリン投与により耐糖能異常を認めたものでは投与前後で腸内細菌叢の変化を認め、投与後の腸内細菌叢をマウスに移植することで耐糖能異常を引き起こすこと、などの結果から、サッカリンによる腸内細菌叢の変化により耐糖能異常が生じていると考えられた。機序としては、サッカリン投与により腸内細菌のグリカン分解経路が活性化し、 それに伴いエネルギー吸収の増加につながる短鎖脂肪酸が腸管内に増加することが示され、そのことが耐糖能異常を誘発したと考えられている。
このように、人工甘味料による肥満・耐糖能障害の発症の機序はいくつか想定されているものの、まだ不明な点が多く、さらなる動物実験やヒトを対象とした研究が必要と思われる。
今回の研究結果は、サッカリンだけでなく人工甘味料全般のリスクが示唆されたことになります。
アルコール飲料に注意
清涼飲料水は飲まないという人でも油断禁物。
口当たりのいい缶チューハイやらカクテルなどのアルコール飲料にてんこ盛りです。
アルコール度数が9%と高いのに飲みやすさで人気の「ストロングゼロ」には、上の研究で用いられたアセスルファムKとスクラロースが甘味料として記載されています。
アルコール摂取も腸内細菌には悪影響というデータもあるので、アルコール+人工甘味料で悪影響が重なってしまう可能性が高いでしょう。
きちんと運動して食事も考えて食べてるのに痩せない!という人は、アルコール飲料を控えてみるといいかも。メタボ対策・ダイエットするなら、まずは酒の種類と量を見直すべきでしょうね。