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体を温める食べ物・冷やす食べ物 信憑性に欠ける理由に気がついた

健康

野菜

「冷え性なら体を温めるものを多く摂るといい」

こんなことをよく耳にします。食べ物を「体を温めるもの・冷やすもの」に分類する中国由来の考え方です。日本では日本漢方という形で同じような分類が古くからあったようです。

大まかな分類は分かるものの、熱を加えると変わるとか微妙なものの区分がよくわからない。

これは本場の中国人に聞くべきと思い、親しい知人に「これは体を温める野菜?それとも冷やす?」と聞くと、毎回即座に返事が返ってきました。どうして分かるのか、分類が微妙なものの見分け方を問うたびに「うまく説明できない」と毎回逃げられてしまい、未だ分からずです。
逃げられたのは正しい説明ができる自信がないから専門家に訊けというもっともな理由によるのですが、身近な概念ということはよく分かりました。

閑話休題。何冊か本を読んだり、ネットを調べてなんとなくは分かったような気がするのですが、その妥当性が分からない。

「体を温める・冷やす」の分類の有効性は研究でも確かめられています。研究の対象は中医学・日本漢方による分類なので、少なくとも日本に昔からある分類は有効なのでしょう。

研究ではそれなりに妥当性があるとされているのに今ひとつ信頼できない。その理由がずっと分からなかったのですが、このページを読んで、はたと気づきました。

疑わしく見えていた理由は次の4つ。

  1. 分類の原典の違い
  2. 効果計測のタイミング
  3. エネルギー収支問題
  4. 暑い時期の野菜が体を冷やす根拠

中医学・日本漢方で用いられる陰陽五行説そのものがどうという話は別にして「体を冷やす・温める食べものの分類」の妥当性の一点に絞れば、わりとシンプルな話なのかなーと。

 

分類の出典問題

体を温める・冷やすの分類はメディアによって異なることがあります。

これが信憑性に欠ける理由。

根拠があれば、みんな同じ結果になるはず。「あっちでは体を冷やすとなっていたものが、こっちでは温めるとなっている。恣意的な分類じゃないか?」となるのは至極当たり前のこと。

原因はおそらく温冷二分法の概念を中医学(中国医学)・日本漢方だけでなく、マクロビオティックでも用いていること。マクロビオティックでは陰陽が異なるケースがあるため、出典が書かれていない分類法をそのまま覚えてしまい別の分類法を目にすると、どちらが本当か分からなくなる。

結果として信頼できない情報となってしまいます。

温冷二分類法は珍しい概念ではない

マクロビオティックも漢方と同じ陰陽概念を用いるためにややこしくなっていますが、それだけの問題でもなさそうです。

そもそも温冷二分類法の起源は中国ではなく古代ギリシャにあったようです。

古代ギリシャ→アラビア商人・スペイン人を通じて
→中南米で強い支持。中国・インドでも一般化。

日本予防医学会メールコラム

ギリシアの四大元素説と中国の陰陽五行説。食べ物を昔から分類していても不思議ではありません。
温冷二分法は世界各地にあるのだから、その人の出身地によっても分類は変わることになります。

たとえば中医学では温に分類されているものが、インドのアーユルヴェーダでは冷になっています(日本予防医学会メールコラム)。

アーユルヴェーダ 中国医学
トウガラシ
玉ねぎ
生姜
ニンニク

考えてみれば地域や用いられ方によって分類が変わるのは当たり前のことで、どの分類法に基づいた評価かを明示しないと混乱をきたすのも当然。

 

中医学での分類は陰陽の二分類ではなく、もっと細かく分かれています。

四気 熱・温 寒・涼
五味 辛・甘 酸・苦・鹹
生薬の材質 軽 重
方向性 昇浮 沈降

薬物にはそれぞれ異なった「薬性(特性と作用)」があり、中医学ではこの薬性を利用して「扶正袪邪(ふせいきょじゃ:正気を助ける薬物を投与し、 強化された正気で病邪を取り除くこと)」することで、臓腑の正常な生理機能を回復させる。 すなわち、病気を治すことは偏った陰陽・気血のバランスを正すことで、健康を回復することとされています。

古代中国の薬物学書籍である「神農本草経」には、「薬には酸・鹹(かん)・甘・苦・辛の『五味』があって、また寒・熱・温・涼の『四気』がある」 と書かれています。薬物ごとにすべて四気五味はことなるため、作用が異なることが書かれています。

第22回 生薬の性質 ~四気、五味、帰経、昇降浮沈~(薬剤師のエナジーチャージ)

つまるところ温冷二分類法の信憑性を問うのであれば、「温冷二分類法を用いることができるか」と、「その分類法(思想)による分類が妥当か」という2点が問題になるわけです。

 

効果計測のタイミング

漢方薬を服用する際には即効性を期待せず長期間飲み続けるよう言われます。

食べ物の「冷やす・温める」について漢方と同じ考え方をするなら、「ショウガや唐辛子を食べると血行が良くなって体がポカポカする」という短期的な効果ばかりでなく、長期的な視点が必要になるはず。

短期的に考えると、どらねこさんのページで指摘されている熱収支の問題が生じます。

1)これは体に蓄えたエネルギー源を余計に燃やすことで一時的に温めており、体の持つ熱量のポテンシャルを低下させているのでは?

2)血管の拡張作用および発汗は体温を逃がす方向に働くので、その後体は冷える事が予想される。

温める食べ物と冷やす食べ物

唐辛子は一時的に血行を良くして体温を上げますが、2の理屈通り発汗によって結果的に体温が下がります。

ショウガについては、ショウガの辛味成分「ジンゲロール」は、深部体温を奪ってしまう可能性も指摘されています。

生の生姜に含まれている成分の1つに『ジンゲロール』というものがあります。生姜の辛味成分の1つがジンゲロール。

このジンゲロールには効能のひとつとして血管を拡張し血行をよくして、体の深部にある熱を手先や足先に運んでくれる働きがあることがわかっています。

しかし、血流が良くなるぶん一時的には温まったように感じますが、体の深部の熱は奪われてしまっており、また気温が低い場合は拡張した血管が冷やされることで逆に体を冷やしてしまう恐れがあるということ。せっかく体を温めようとしているのに、これでは全く意味がありませんね。

ちょっと待った!その生姜、本当に体を温めている?

ラットを使った実験なので人間にどの程度当てはまるかは分かりませんが、ショウガは必ずしも体を温めるわけではないとは言えます。

 

さらに生薬としてのショウガは体温そのものを上げるために用いられているわけではないという点も留意が必要になります。

漢方の生姜は整腸作用を目的に用いる
ショウガの話をもう少ししておきましょう。新生姜とひね生姜は食卓でお馴染みですが、漢方で用いるのは生姜の皮を除き乾燥処理をした「乾生姜」です。少しややこしいのですが、この乾生姜のことを日本の漢方では生姜(ショウキョウ)と呼んでいます。乾生姜はいろいろな漢方薬に入っていますが、目的は体を温めることではなく、胃腸の働きを整えることです。昔は生姜を長時間蒸して、さらに天日干ししたのが「乾姜(カンキョウ)」となります。

ジンゲロールとショーガオールはショウガの成分として知られますが、この2つの成分には逆の作用があります。

ジンゲロールは、私たちが食べる新生姜やひね生姜に多く含まれており、TRPA1という冷受容体とTRPV1という温受容体を同時に刺激します。生姜を食べて温かい感じがするのは温受容体を刺激するため、温感を生じるためなのですね。

「ショウガで体が温まる」はまやかし m3.com

ショウガを食べたときの体温変化が「感じるだけ」かどうかは微妙ではありますが、ショウガが必ずしも体を温めるわけではないこと、そして漢方では体温調節のために用いられているわけではないことは確かなようです。

血行が良くなるから体温が上がる、暖かく感じるから体温が上がったといった、イメージで捉えるところに無理があるわけです。

温の食材を摂ると体が温まるという根拠もある

体を温める食材を長期的に多く摂ると、体温に変化をもたらすという結果もあるようです。

食性を科学的に調べるため、女子栄養大学と北里研究所が共同で行った実験をご紹介します。

温性の食品を食べると・・・
血液循環がよくなって体があたたまる

まず健康な女子大学生8人(20.6±0.7歳)に、体を温めるとされる温性の食事(1812kcal/日・温性食品の重量比53±13%)を5日間とってもらいました。この食事は、もち米、あじ、鶏肉、しょうがなど温性の食品の割合が、ふだんの食事の約3倍になっています。その結果、温性の食品を食べたあとは、安静時の体表温度が高くなることがわかりました。

いったん冷えても体表温度が回復しやすい
次に冷水に手を30秒間つけて、そのあとの体表温度の変化を比較しました。すると、温性の食品を食べた人は、冷水に手をつけたあとの体表温度の回復率が高くなることもわかりました(グラフ参照)。

以上のことから、温性の食品を食べると、体が温まるだけでなく、いったん冷えても、体温が回復しやすくなることが確かめられたのです。

冷え性対策(テルモ)

「コクとうまみの秘密」伏木 亨(ふしき とおる)京都大学・農学研究科教授 新潮社
(参照:P43)
「体中に温度プローブを張り付け、各食材を摂取させると、温熱食材はいずれも
体温を上げることが、観察されました。中国家庭料理に生きる」温冷 2 分法は、
「驚くほど正確であり、けっして、迷信ではありません。」

日本予防医学会メールコラム

1つ目の事例は日本漢方、2つ目は中国医学に基づくもの。
二分類はそれなりに合理性はあると考えられます。

 

なぜ暑い時期の野菜は体を冷やすのかの仮説

エネルギー収支の問題は今回は避けます。エネルギー収支がプラスマイナス0の人が摂取カロリーそのままで体温を上げる食事をしたらどうなるのかはちょっと興味をそそられますが、仮定に仮定を重ねても仕方がないですから。

さて、なぜ暑い時期の食物は体を冷やすのか。

なぜ夏野菜は体を冷やすのか科学的/分析的/栄養学的説明を試みているものが人力検索はてなにありました。
面白かったので転載します(以下、http://q.hatena.ne.jp/1076855946より)。

http://www2q.biglobe.ne.jp/~kazu920/628.htm

身体に効く栄養成分・食材・調理方法夏野菜にカリウムが多いというのは、水分量保持に必要だからだと思われます。
このページでは「水分を引きつける」となっていますが細胞内に水分だけが多いと浸透圧が下がりますからそれを調節する上でカリウム(ナトリウムも)の含有量が多くなっているのではないでしょうか。
逆に、冬野菜にカリウムが少ない、というのは水分がそれほど豊富でないということかもしれません。寒い季節に水分が多いと細胞が凍ってしまうおそれがありますから。

http://www.kasei.ac.jp/inst/00/0012015/zatugaku2.htm〔リンク切れ〕

逆に、冬野菜にビタミンCやEが多いのは細胞の強度を高めている効果がありそうです。
夏のほうれん草と冬のそれではビタミンC含有量に大きな差があるそうですね。

http://www.koide.gr.jp/news/data2002/12-2.htm〔リンク切れ〕
00-2
おまけです。冬野菜は糖が豊富で細胞が凍結しにくいとのこと、甘みがあるのも納得でした。
以下は私見なのでまちがっていたらごめんなさい。

総じて、野菜は人間が栽培に関わっているものですが人間による取捨選択以前にもともとその野菜が自生していた環境に適応している、というかそれぞれの環境に適応した植物が生き残ってきておりその中で食用になるものを人間が栽培するようになった、という風に考えられると思います。

 

園芸サイトからですが、

>カリウム(K)は、一般に「根肥」と呼ばれ、根や果実の生長に欠かせない。また、耐暑性、耐寒性、耐病性を高める効果もある。とあります。

一般に果実が生長するにはカリウムが不可欠であるようです。

http://www.amigo2.ne.jp/~tumiki/colum.htm

土実樹みかん豆知識

ついでに、ミカンはカリウム含有率はそれなりに高いです。

http://cache.yahoofs.jp/cache?url=http%3a%2f%2fhome.hiroshima-u….〔リンク切れ〕

ここはモトのページが消失しているのでキャッシュですが、植物におけるビタミンC合成経路や生理的機能はほとんど解っていないようなので、何故冬の食べ物にビタミンCが多くなるかは現在の科学では解らないようです。その他のビタミン群も植物体内での生理機能はよく分かっていないようです。

わたしは鍼灸師なのですが、寒涼平温熱の食品が、ナトリウムやカリウム、ビタミンの多寡に依ってその性質が分類されているわけではない様なので(似たような栄養素の物でも性質が違う)、経験則によるものであるとしか言えないと思います。

大まかな分類としては暑ければ人の体を冷やす作物が収穫できる。その性質に当てはまらないものは、経験則により個別に分類するといったところでしょうか。

陰陽五行説に無理やり当てはめてこじつけ的な説明をすることもありそうですが、多くの場合は当てはまるのかなーという気がします。

 

まとめ

中医学・日本漢方といった古くからの分類法に則れば、「体を温める食べ物・冷やす食べ物」の分類はそれなりに妥当だろうと思います。経験則ではあっても長年培われてきたものは馬鹿にできません。

ただ、伝統的に食されてこなかった新しい食材はどうなるんだという疑問は生じます。この色ならこれ、この性質ならこれ、といった分類も経験則に則ったとは言えますが、説明として苦しくはあります。

 

いずれにせよ「今日は寒いからこれを食べたら体が温まる、それを食べると冷えるよ?」という短期的なスパンで考えるのはこじつけっぽい。

たとえばコーヒーは体を冷やすものに分類され、冷え性なら飲まないほうがいいという人がいました。しかしコーヒーを飲んでも体温は下がらないとメディアが報じると、冷え症でもコーヒーを飲んでOKとなってしまう。
そこには長期的なスパンの視点はありません。

仮にコーヒーに体を冷やす作用があったとしても、冷え性でもほどほどに嗜むなら害もないはず。もし冷え性なら控えるべきと考えるなら、長期的な効果も見なければいけないはず。しかしそうはならない。

この手の健康情報で胡散臭さを感じるのは、短期的かつ表面的な現象だけを見て、これがいい、あれはよくないというところ。
でもこういうのって中医学や日本漢方とは関係ないんですね。

 

寒い日に鍋をつっつけば体が温まる、水分の多いものを食べれば体は冷える。
冷え性なら体を温める食材を多めに使うレシピを考える。食が細くて痩せている人なら体を温める食材だけでなく、食べる漁を多めにしよう。

温冷二分類もこの程度の使い方であれば胡散臭さも感じません。

ここまで書いて気づいたのですが…
「体を温める・冷やす」論に感じる怪しさに漢方・中医学は関係なく、メディアの短絡的な記事のせいなのかも。信じる信じないは別問題ですが、専門家の記事を読んでも「怪しさ」は感じないんですよね。