地元自治体住人向け原発見学会「浜岡原子力発電所の見学会」って知ってます?
浜岡原発では、近隣自治体の住民を対象とした「浜岡原子力発電所安全性向上対策現場見学会」という見学会が3ヶ月ごとくらいに行われています。
ウェブ広告も見かけるのですが、おそらく対象地域のみをターゲットとしているので県外の人の知名度は低いかも。
こんな広告です。
浜岡原発の施設の地震・津波対策を紹介するという趣旨で、PRのための展示施設「原子力館」だけでなく、発電所構内も含めた安全対策への取り組みを実地に見学できるというもの。
発電所構内(防波堤、改良盛土、ガスタービン建屋等の現場、運転訓練シミュレーター等)
発電所での見学行程は2時間20分ほど。参加者上限は毎回50名で参加費無料。
主要駅からのバスの送迎付きと、気合の入ったイベントです。
対象地域
対象地域となるのは文字通りの近隣自治体住民で、浜松市・静岡市は圏外。
御前崎市、牧之原市、掛川市、菊川市、島田市、磐田市、焼津市、藤枝市、袋井市、吉田町、森町にお住まいで小学生以上の皆さま。
警備上の理由により顔写真つきの身分証明書が必要なため、ごまかして参加することもできないという(住所から生年月日まで求められる)。
- 運転免許証
- パスポート
- 住民基本台帳カード(顔写真付き)
- 在留カード
- 特別永住者証明書
参加資格に居住地域以外の制限はありませんが、浜岡原発関連の裁判の当事者だけは除外されています。
(注)浜岡原子力発電所にかかる裁判の原告および代理人の方については見学参加をお断りさせていただきます。
募集要項はこんな感じ(18年6月)
日時 | 2018年6月15日(金曜日)~2018年6月25日(月曜日) [日時 発着場所] (注)自家用車で現地集合での参加も可能です。 |
---|---|
内容 | 津波の浸入を防ぐ防波壁など、津波や地震に対する安全性を高めるために実施している工事現場の見学会 |
場所 | 浜岡原子力発電所 |
募集人数 | 各回 50名 |
参加費 | 無料 (注)ご自宅から集合・解散場所までの移動はお客さまのご負担とさせていただきます。 |
参加条件 | 御前崎市、牧之原市、掛川市、菊川市、島田市、磐田市、焼津市、藤枝市、袋井市、吉田町、森町にお住まいで小学生以上の皆さま。 (注)浜岡原子力発電所にかかる裁判の原告および代理人の方については見学参加をお断りさせていただきます。 |
応募方法 | 新聞折込チラシの参加申込ハガキに、必要事項を明記のうえ、ご投函またはファックスいただくか、下記応募フォームからお申し込みください。 (注)ご家族、ご友人、お知り合いの方もご一緒にお申し込みいただけます。ただし、対象市町にお住まいの方に限らせていただきます。 |
応募締切 | 2018年5月25日(金曜日) 参加申込ハガキ:2018年5月25日(金曜日)当日消印有効 ホームページ応募フォーム:2018年5月25日(金曜日)応募分まで |
当選発表 | 応募者多数の場合は抽選とさせていただきます。当選された方には、参加証の発送をもってお知らせいたします。なお、参加証の発送は応募締切の約10日後となりますのでご了承願います。 |
主催・共催 | 中部電力株式会社 |
備考 | お客さまの個人情報は、今回の「見学会」に付随する業務をおこなうために必要な範囲内にて使用させていただき、適切に管理させていただきます。 |
お問い合わせ先 | 中部電力株式会社 静岡支店 広報グループ Tel:054-273-9004 Fax:054-251-6830 受付時間:9時~12時、13時~17時(土曜・日曜・祝日除く) お電話でのご応募は受け付けておりません。 |
浜岡原子力発電所安全性向上対策現場見学会(リンク切れ)
[open title=’2018年3月見学会’]日時 | 2018年3月1日(木曜日)~2018年3月25日(日曜日) [日時 発着場所] (注)自家用車で現地集合での参加も可能です。 |
---|---|
内容 | 津波の浸入を防ぐ防波壁など、津波や地震に対する安全性を高めるために実施している工事現場の見学会 |
場所 | 浜岡原子力発電所 |
募集人数 | 各回 50名 |
参加費 | 無料 (注)ご自宅から集合・解散場所までの移動はお客さまのご負担とさせていただきます。 |
参加条件 | 御前崎市、牧之原市、掛川市、菊川市、島田市、磐田市、焼津市、藤枝市、袋井市、吉田町、森町にお住まいで小学生以上の皆さま。 (注)浜岡原子力発電所にかかる裁判の原告および代理人の方については見学参加をお断りさせていただきます。 |
浜岡原子力発電所安全性向上対策現場見学会
(http://www.chuden.co.jp/smt/event/3266765_24701.html リンク切れ)
対象地域に浜松市・静岡市が含まれない理由
浜岡原発見学の対象地域が11の自治体のみに限定されている理由は、原発から30km以内の地域に限られているためです。
御前崎市、牧之原市、掛川市、菊川市、島田市、磐田市、焼津市、藤枝市、袋井市、吉田町、森町
原子力災害(原発事故)に備えた原子力防災計画では、30km(正確には31km)圏内を「緊急防護措置を準備する区域」として避難計画を作成しています。
静岡県の原発事故時の対応計画「浜岡地域原子力災害広域避難計画」では、御前崎市の一部と牧之原市の一部地域を原発から5km区域のPAZ(予防的防護措置を準備する区域)と定めています。
PAZよりも広い30km圏内のUPZ(緊急防護措置を準備する区域)に含まれるのが上の11自治体というわけです。
浜松と静岡が見学会対象外地域なのは31km以上離れているため。
さらに浜松市は浜岡原発の単独事故の場合の避難先の一つとなっています。
浜岡原発で放射能漏れが生じても風向きの関係で東に向かう可能性が高く、原子力災害の避難先になっている浜松市が見学対象にならないのは仕方なし。
PAZ、UPZとは何ですか。
A.IAEAの国際基準では、原子力発電所で事故が発生し緊急事態となった場合に、放射性物質が放出される前の段階から予防的に避難等を開始するPAZ(Precautionary Action Zone:予防的防護措置を準備する区域)と、屋内退避などの防護措置を行うUPZ(Urgent Protective action planning Zone:緊急防護措置を準備する区域)を設けることになっています。
IAEAの国際基準を参考に原子力災害対策指針では、PAZについては原子力発電所から概ね5km圏とすることを、UPZについては概ね5~30km圏とすることを定めています。
浜岡原発は、ものの見事に静岡と浜松から30km以上離れている中間地点に位置していることをいまさらながら実感しました。
浜岡原発の現状
原子炉形式 | 運転開始 | 定格出力 | 現況 | |
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1号機 | 沸騰水型軽水炉(BWR-4)Mark-1 | 1976年3月17日 | 54万kW | 2009年1月30日運転終了 2016年2月3日廃止措置 |
2号機 | 沸騰水型軽水炉(BWR-4)Mark-1 | 1978年11月29日 | 84万kW | 2009年1月30日運転終了 2016年2月3日廃止措置 |
3号機 | 沸騰水型軽水炉(BWR-5改良標準型)Mark-1改 | 1987年8月28日 | 110万kW | 2010年11月29日より 定期検査中 |
4号機 | 沸騰水型軽水炉(BWR-5改良標準型)Mark-1改 | 1993年9月3日 | 113.7万kW | 2011年5月14日より 運転停止 |
5号機 | 改良型沸騰水型軽水炉(ABWR) | 2005年1月18日 | 138万kW | 2011年5月14日より 運転停止 |
6号機 | 改良型沸騰水型軽水炉(ABWR) | 計画見送り | 138万kW | 計画見送り |
浜岡原発の1号機と2号機は廃炉の手続きに入っています。311以前に予定されていた6号機の建設は中部電力の長期計画から外されています。
理解を求めるなら中電本社移転かな
活断層がすぐそばを走っている上に東海地震、東海・東南海・南海連動型地震のリスクがある浜岡原発では、立地的に再稼働は難しいでしょう。
22mの防波堤があっても、30年以内に70%か80%の確率で大地震が来ることを考えれば「想定外」の不安が払拭できないためです。
使用済み燃料を保有しているリスクも解消されていないのに運転再開をすれば、リスク要因にリスクを掛け合わせるようなもの。
くわえて福島の原発事故は事故そのものの影響もさることながら、「安全」という電力会社の言葉への不信感を植えつけました。
なにしろ福島も万全の安全対策を行っていたはずが、指摘されていた危機対策すら怠っていたことが311で露わとなってしまいました。これで「安全だ」という言葉を信用するのは無理。
浜岡原発では安全・万全だとしながら、2018年になってもトラブルが生じています。「あれ?万全を期してるんじゃなかったの?」「本当に信じていいの?」となるのは当然と言えば当然。
[tensen]中部電力は18日、浜岡原発(静岡県御前崎市)の廃棄物減容処理装置建屋の2階で、放射性物質を含む粒状の堆積(たいせき)物が見つかったと発表した。基準値を超える放射能量が測定されたため、立ち入り制限を行った。建物外部への放射能漏れはないという。
しかし原発施設を維持するだけでも金がかかるのに、安全対策に大金を投じたことを考えると、施設を遊ばせておくのももったいない話です。
浜岡原発再稼働の可能性があるとすれば、中部電力が本社を御前崎市、あるいは菊川市に移転することかな。
意思決定をする人たちの家族がいれば、中部電力も本当に安全だと確信が持てない限り再稼働など考えないだろうと、その点だけは信頼できるからです。
「感情問題にすり替えるな」とおしかりを受けそうな気もしますが、安全性を自ら示すという態度は意外と重要だと思うんですよね。伝染病の研究をしていた19世紀ごろの学者は、自らを実験台にしていました。「他人ではなく自らの身体で検証」という姿勢が見えれば、少なくとも自分は安全なところにいて、他人を犠牲にすることはないだろうと考えられるからです(実際には自分も他人も巻き込んだりします)。
本社の原発所在地移転は「ぼくが考えた最強のアイデア」というわけではなく、フィンランドの核廃棄物管理会社「ポシヴァ」が、本社を最終処分場を建設する自治体「エウラヨキ」に移転した実例に基づいています。
ポシヴァは2010年のドキュメンタリー映画「100,000年後の安全」の舞台となった、核廃棄物最終処分施設「オンカロ」を建設している会社です。2022年より最終処分場として運用を開始する予定で建設を進めています。
核廃棄物をオンカロに運び込み、100年後には入り口を完全に埋め、アクセスをできなくしてしまいます。つまり100年後には掘った穴を埋め立て放置するという計画。
中部電力とポシヴァでは会社の規模が異なるので、同一直線状に置くわけにはいきません。しかし「オンカロ」の建設に住民の同意が得られた理由が本社移転だけではないにしても、危険性を分かち合うという行動には説得力があったことでしょう。
核のゴミ、フィンランド市民はどのように処分方法を決めたか|アゴラ
自分たち(の家族)は安全なところにいて「安全対策は万全」と言っても、現状で信頼を得るのは難しいでしょう。
まとめ
地元住民に知ってもらおうという方向性はいいと思います。安全対策を施してPRで根気強く地元の理解を求めることは必要なことでもあります。
しかし、感情面での説得がないために空回りしているような気がします。
▼麻衣さんの歌う「Dreamland」のCMはめちゃくちゃいいですが、イメージアップしても原発の安全性への猜疑は減らせない中部電力|原子力発電 – テレビCM
「できることは全てやった。絶対の自信があるから本社も移転する。社員の家族も一緒だ。だから理解してくれ」と言えば、理解を示す人もいるんじゃないかな。
中部電力|イベント情報(http://www.chuden.co.jp/smt/event/3266765_24701.html リンク切れ)
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