チョコを食べるとガムが溶ける理由は油でなく乳化作用かも?その2
ガムを噛んでいる時にチョコレートを口に入れると、ガムが溶けてしまう原因は油ではなく、乳化かもしれないという実験の続きです。
前回は『サラダ油』、『マヨネーズ』、『ココア』の3種類で行い、ガムが一番溶けやすいのは【マヨネーズ】という結論に達しました。
今回は乳化剤として利用される卵黄と、チョコレートそのもので比較しました。
前回で湯煎の大切さを学習したので、カセットコンロでの湯煎を準備。また器には、それなりの大きさがあり、横からも底からも中が見えるモロゾフのプリンの容器を用いています(ガラス製のやつ)。
卵黄とチョコでガムが溶けるか実験
実験の目的は、ガムがチョコレートで溶ける理由が乳化作用によるものか油によるものなのかを調べることです。
今回は乳化剤代表として、マヨネーズの酢と油を混ぜるのに利用されている卵黄を使いました。
同じ条件でどうなるかを確認するために、前回は省いたチョコレートも実験に加えました。
卵の黄身 2個
家にある卵を使うと怒られるので、実験にはスーパーで安売りしていたものを用いました。
スプーンで細切れにするのは煩わしかったので、手で数切れにちぎった上でスプーンで2分ほど撹拌。
結果はというと、ものの見事にバラバラになっていました。
シーチキン並みに細切れになっているため、茶こしの隙間からも漏れた分があったと思います。
結果:はっきり「溶ける」とはいえないものの、ガムは卵の黄身には溶けるっぽい
チョコレート 2/3個
チョコレートは明治のミルクチョコレートを使用。板チョコの定番です。
チョコはそのままだとネットリしすぎて撹拌できないので水で伸ばすことに。
水の量を多くしすぎてガムの溶けやすさに影響がでると困るので、足した水の量は50ccと控えめにしています。
チョコは油(サラダオイル)で伸ばすほうが滑らかになりますが、ガムは油に溶けることが分かっているので水にしておきました。
こちらも手で数切れにばらした上で、スプーンで2分ほど撹拌。
結果は粘着力はなくなり、小さな塊に分離しました。しかし普通に手で集められるレベルの大きさでした。
口の中では咀嚼により細切れになり、それがまとまらずに唾液に混じって飲み込んでしまいます。
だから口の中で「溶けた」状態になりますが、スプーンでカシャカシャする程度では足りないようです。
結果:あまり溶けないけれど、粘着力はなくなる
実験結果を踏まえての感想
卵黄のほうが細切れになったことから、ガムがチョコで溶けるのは油よりも乳化作用によるもの、と結論づけたくなります。
上が卵黄2つで溶かしたもの。
下はチョコを用いた結果。
そう結論づけたいところですが、どうにもはっきりしない結果となっています。
口に含めば溶けるはずのチョコを使っても溶解しなかったことから考えるに、咀嚼を再現できていないことが最大の原因だろうと思います。
そういう意味では、前回・今回の実験の方法から結果まですべて微妙だったので、改めてやり直すべきというのが結論です。
他で行われている実験をみていると、撹拌に10分以上かけているケースもあるんですよね。
でも、口の中にチョコを入れたガムはすぐに溶けてしまう。そう考えると、撹拌時間を長くするのは条件が違わね?と思うんですよね。
きちん実験をしたレポートがあった
実験では「ガムが溶ける原因はこれだ!」と言える結果が出なかったので、改めてネットを検索してみたところ、ガムが溶ける原因をきちんと実証したレポートを発見しました。
⇒ガムが溶けるのは○○のしわざ?(リンク切れ)
(長野県木曽青峰高等学校理数科の生徒による実験レポート)
このレポートによると、ガムは
- 油の種類によらず溶ける
- 親油基をもつ溶媒に溶ける
- 親油基をもつ溶媒であっても、水の割合が多くなると溶けにくくなる
という結果になっています。
【実験3】溶媒にエタノールと水を混ぜたもので実験を行った。エタノールと水の比は次の5種類とし
た。(エタノール : 水) = (9:1), (8:2), (7:3), (6:4), (5:5)
予想通りガムは溶媒に含まれる水が多くなると溶けなくなった(図⑦)。また、酢酸でも同じこと
が言えるか確かめるため、氷酢酸(100%)と食酢(4.2%)で実験を行った。すると、酢酸には溶け、
食酢には溶けなかったため、エタノールと同様のことが言える。
そして、こう結論づけています。
ガムが溶けるのは親油基をもつ溶媒のしわざ。
水はガムの溶解を妨げる物質である。
ちょっと気になるのは撹拌に20分かけている点。
この実験で溶ける原因は究明されていますが、それだけ時間をかけての結果だと、口の中で生じている現象とは少し違っているんでない?と思えるわけです。
口の中のガムとチョコの場合、もっと速やかな変化が生じているんですよね。
もちろん咀嚼を再現できない分、時間をかける必要があるのは分かるんですけど。
乳化剤として働く物質は親油基をもつ
乳化剤として働く物質は、親油基なり疎水基側が油を取り囲むことで、水に溶けた状態となります。
つまり、上の【木曽青峰高等学校】のレポートに基づけば、ガムが乳化作用で溶けるのは当たり前ということになります。
そして、溶媒に含まれる水の量が多ければ溶媒の種類にかかわらずガムは溶けにくいとするなら、咀嚼で唾液だらけになった口の中では、ガムは溶けにくいということになります。
で、ガムを噛みながらサラダオイルを少量口に含んでみました。
結果はと言うと。
ほとんど溶けません。歯ごたえがなくなり、なんか溶けてる感じはするけどバラバラになったりはしない。誤って飲み込んだりもしないレベルのふにゃふにゃさです。
じゃあ卵黄とマヨネーズならどうかというと。粘着力はなくなるものの、サラダオイルと同じく今ひとつ溶けないんです。
特にマヨネーズは口に多く含みたいものではないし、口に入れた瞬間に唾液が溢れてくるので口の中が唾液で一杯になってしまう。するとマヨ濃度が一気に下るので、実験通りにはいかないんです。
Yaruzouの結論
- ガムが油分で溶けるのは事実
- ガムを噛んでいたら口の中では唾液が充満するからか、油ではあまり溶けない
- 卵黄を1つ分口に含んでもあまり溶けない
ということで、チョコでガムが溶ける理由は、おそらく乳化作用と油の作用の両方です。
ガムを噛んでいると唾液がたっぷり出るため、口に含んだものの濃度が下がってしまうんですね。
口の中のガムがチョコレートに溶けやすいのは、口に含んだばかりのチョコはネットリ感が強く、唾液が混ざりにくいこともあるのかもしれません。
実験結果が微妙なのに結論を出すのはどうかと思いますが、原理的には乳化作用と油の合わせ技だろうと考えるのが自然ですね。
厳密に調べるならビーカーや食器を使わず、誰かが口の中で咀嚼し、それを取り出して確認するしかないでしょう。
付記:家庭にある食器で実験をする時のアドバイス
家庭にあるもので実験をしてみて、あとからこうしておけばよかったと思ったことを書いておきます。
- 実験に使っても家族に叱られない食器や食品を使う
- 家庭にある食器で実験をするなら底も横もクリアに見える透明な容器がいい
- ショットグラスでは小さすぎるので、ウイスキーグラスくらいの大きさは必要
- 入り口がすぼまっているガラス製のフルーツやプリン容器だとちょっと扱いにくい
- 人肌まで温めるには、カセットコンロに大きめの鍋を置いて湯煎する
- ガムは細切れにしておく
- チョコレートは溶けるとベッタリしすぎるので、水なり油なりで伸ばす(水を使う方が口の中に近くなるものの溶けにくくなる。一方油を使うと、油のせいかチョコの油分が原因なのかがわからなくなるので一長一短)
この手の実験で溶ける原理は分かっても、実際に口の中で生じていることが再現できているかという疑問は払拭できません。
ということで、実際に咀嚼した結果を確認しないことには結論はでないだろうと思います。
ディスカッション
コメント一覧
ありがとうございます!
ガムの実験で、砂糖はガムがやわらかくなるだけでしたが、なぜかガムシロップだとガムが溶けたので、油でないのになぜと謎がうまれてしまい、、、、乳化剤だったんですね‼️
助かりました!
遠藤さん
なるほど、ガムシロップで溶けましたか。
考えてみれば、ガムシロップにもコーヒーフレッシュにも乳化剤は使われていますね。
コンビニコーヒーでいつも使っているのに気付きませんでした。
今度試してみます。コメントありがとうございました。