ふるさと納税をやめるべきシンプルな理由

雑学、雑感ふるさと納税

日本 故郷 ふるさと いなか

「ふるさと納税」の返礼品三割制限に真っ向から反発する自治体があることには驚くばかり。いまだ寄付金の4割、5割の金券を返礼品にしている自治体もあるほど。

つい最近まで「ふるさと納税」が制度として好ましくないことは承知で、自分の自治体の利益のためにごねているのだと思っていたのですが…

彼らは本気で素晴らしい制度と考えているのではないかという可能性が頭をよぎるようになりつつあります。

「ふるさと納税」がダメな理由は多々ありますが、致命的欠陥は次の2点かなあ。

  1. 仕組み上、やらなければ損
  2. 納付先に選ばれた自治体には、コスト無しで増えたように見える

もちろん寄付金を集めるためには「宣伝・返礼品・手続き手数料」の費用がかかります。しかし費用以外の部分が丸儲けに見えてしまう。

極端な話をすれば、費用を8割にしても2割は純増になります。したがって人口の少ない自治体は費用が8割かかろうが全国から寄付を集めたほうが得になります。

この状態では寄付金集めのためのコスト意識が働かなくなります。高額な返礼品で釣る行為は、無駄な徴税コストをかけているようなものです。

納税者は有権者でもある

本題に入る前にひとつ確認。

納税者であるあなたは、有権者でもあります。

有権者は政策や行政サービスを執り行う市町村長・知事・国会議員を選挙する立場にあります。あなたにとって適切と思える行政の運営や立法を行う首長や議員を選ぶことを通じて、地元や国政に参加しています。

選んだ市長が無駄遣いと思える施策を続けていたらあなたはどうしますか?
次の選挙ではその人には投票しない、あるいはリコールということもありうるでしょう。

有権者であるあなたは、行政に対する責任も負っているのです。これが前提です。

 

ふるさと納税で得をしているようには見えるが…

電卓・計算機

納税者には「ふるさと納税」は実質的な減税に見えるので得をします。しかし地元自治体のサービスは低下する可能性がある。

これは住民にとってのデメリットです。

地方交付税が交付される自治体であれば、控除額の75%が国庫から補填されます。所得税の控除分も合わせれば、より多くの負担が国に発生しています。

国としても損です。

国の負担分は交付金への上乗せと考えられます。適切な分配が行われているのであれば、地方活性化のための費用として気にしなくて構わないでしょう。しかし、国の負担が発生していることは忘れてはいけないでしょう。

ふるさと納税で「得」をするのは、寄付先となった自治体と寄付した人です。

得になる制度を利用するのは当然ですが、行政が損得で動くと好ましくない状況が発生します。

ふるさと納税は、好ましくない状況を推進する仕組みになっています。

 

やらなければ損な仕組み

現在はふるさと納税を受け付けていない自治体があります。また、総務省の通知に則り3割制限をしている自治体が多いので、3割以上の高額返礼を用意すれば、より多くの寄付が集まります。

返礼品の還元率を高くすれば、どこの自治体でも寄付金は集まります。コストを考えずに寄付を集めるだけなら簡単です。

たとえ寄付金額の8割の費用をかけても2割分は手に入るので、その自治体は得します。

本来はお金を集めるためのコスト意識が働くところですが、人口の少ない自治体にとっては濡れ手に泡にしか見えない制度なので際限がなくなります。

結果として寄付金集めに躍起にならない自治体は、自動的に損をしてしまう構造になっています。

「やらなきゃ損をするならおまえのとこもやればいいじゃないか」という人がいます。

もっともです。すべての自治体は返礼品を用意して、寄付金集めをがんばりましょう。

 

返礼制限なしの完全競争になったら

返礼品を充実させる(還元率などと呼ばれます)ことで寄付金が集まっている自治体は、ようは価格競争で優位に立っている状態にあります。

話を分かりやすくすくするために、全ての自治体が金券による還元を行ったとします。

返礼品として5割の金券を送る自治体が現れれば、4割の自治体には誰も寄付などしないでしょう。損得勘定抜きで応援したいという人はいるかもしれませんがごく僅か。もっともそんな奇特な人なら返礼品なくてもしてくれるでしょうけれど。

寄付金額が多い自治体は、他の自治体が返礼品の額を控えているから集められているに過ぎません。

還元率を5割にしても、手数料込みで寄付金額の4割も入ればその自治体にとっては「お得」になります。しかしすべての自治体が一律5割にしたらどうなるか。

知名度が高い自治体に多く集まるでしょうね。そしてふるさと納税総額の4割しか自治体に入らないことになります。

「価格競争はだめだ!( ー`дー´)キリッ」「ものはできるだけ高く売るべきだ」と口にする人はたくさんいるのに、ふるさと納税の価格競争への反対が少ないのは不思議です。

さて、価格競争になれば還元率が高い自治体ほど有利になりますが、還元率を上げた分だけ歳入まで減ってしまいます。

多くの寄付金を集めようとすべての自治体が努力をすればするほど、自治体で使える寄付金の総額が減ってしまう。

市場の失敗を是正する役割の行政が、市場の失敗に巻き込まれてしまう。笑うに笑えない話です。

だから返礼品の上限設定は絶対に必要なのです。反発すること自体がおかしな話です。総務省も、金券解禁、上限もなしにすると言えばいい。上限設定に反対することがどれだけ馬鹿なことか、みんな気づくことでしょう。

仮に反発した自治体が上限3割を守ったとしても、すべての自治体が「集金」目当てに参入すれば、今集められている自治体の寄付金額は確実に減ります。

上限が3割というルールのもとで完全競争になれば、パイの奪い合いになるので競走が激しくなるのは当然ですよね。

 

モノ以外ならいいのか

返礼品でお得感を出して寄付金を集めるのは好ましくない。

しかしうちは通りの整備に充てる。あるいは動物愛護団体への補助金として割り当てている。だからふるさと納税の趣旨に反してはいない。

こんな自治体もあることでしょう。

モノで釣るよりははるかにましですが、微妙な部分もあります。

たとえば焼却炉や下水処理場への寄付は集まりにくい反面、景観整備や分かりやすい福祉への寄付金は集まりやすいことでしょう。

いずれも自治体の役割ですが、集まりやすい寄付項目とそうでないものがあります。そうすると集まりやすい事業に寄付金を割り当てるだけなので、イメージのいいものだけがふるさと納税サイトに並ぶことになります。

これって行政への理解とは逆方向に進んでいませんか?

命名権やご当地ヒーローなど、面白いとは思います。とはいえ本質的な行政サービスではなく、面白い企画でもって他の地域から、住民へのサービスに使われるはずだった税金をぶんどるのはどうなんだという疑問も湧きます。

 

ふるさと納税について有権者として考えよう

日本 故郷 ふるさと いなか

ふるさと納税をすると得をする「納税者」の立場でなく、「有権者」として考えてください。

ふるさと納税は効率的な行政の運営に寄与していると思いますか?

公正な制度だと思いますか?ふるさと納税のゆがみをなくすことができると思いますか?

 

「地元の行政サービスが低下しても構わない、よその自治体に寄付したい」という民意を考えれば、地方交付税による75%の交付金の補填もおかしな話ですよね。

個人的にはふるさと納税はなくすべきだと思いますが、それでも続けるならば。

返礼品なし。各自治体は首長によるお礼の文書をウェブサイトに掲載。これでいいんじゃないですか?