希望出生率 苦し紛れに作り出した造語
希望出生率(きぼうしゅっしょうりつ)
希望出生率は子供を望む全ての人が、希望する人数の子どもを産んだと仮定したときの合計特殊出生率。安倍内閣は調査で得られた数字から、希望出生率は1.8人と推定したもの。
合計特殊出生率は一人の女性が生涯で産む子どもの人数を便宜的に算出したもので、人口の維持には2.06人から2.07人が必要。
実際の合計特殊出生率は2016年で1.44人。
政府は希望出生率の1.8人と現実の1.44人に横たわる0.36人のギャップの原因を取り除くべく、子どもを希望する国民への支援を充実する方針を打ち出しています。
子育て支援は安倍内閣新3本の矢の2つめの施策として、2015年9月に発表。その実現のための子育て支援や若者の雇用安定の方針を2016年6月2日に閣議決定しました。
産めよ増やせよを口にできない苦し紛れの1.8人
人口を維持するための合計特殊出生率は”2”以上が必要です。小数点以下は社会環境によって異なり、現在の日本で人口を維持するために必要な出生率は2.06人、または2.07人となっています。
出生率1.8人では毎年1割の子どもが減っていくことになります。同時に出産適齢期の女性も今後減り続けているため、少子化スパイラルと言っていい状態となっています。
安倍政権に少なくとも30年後を見据えるつもりがあるなら、移民を受け入れているか、産んでくれと頼み込んでいてしかるべき数字と言えます。
穿った見方をすると、移民受け入れはめんどくさい、産めよ増やせよと押しつけると反発を買う。仕方がないから1.8人という数字をはじき出したんだろうとすら思えます。
適正な人口構成を維持できるならば人口が少ないことは必ずしも問題にはなりません。母語を話す人口が減れば母語で専門知識を学べなくなるといったことも生じますが、日本はそこまで至ることはありません。
問題は急激な人口の減少にあります。とりわけ厳しいのが、今後20年間に子どもを産める女性(15~49歳まで)の人口が右肩下がりの点です。今後15年間で2割ほど、2,500万人から2,000万人になることが予想されます。
今すぐ出生率が1.8人になっても人口は減るというグラフはこちら
人口動態は天気予報と違って当たった外れたはありません。これから生まれてくる世代が成人し、子供を産む年齢になるまでの人口は確定しています。
このままいけば限界集落はほぼ姿を消すでしょう。
すでに20年先までの労働人口は確定しています。今、すぐに希望出生率1.80人が実現したとして、そこに何を見出すの?と問われるべき数字と言えます。
「ニッポン一億総活躍プラン」フォローアップ会合(政策会議)
希望出生率(PDF)
ディスカッション
コメント一覧
なんか…女性を産むための道具としか見てなくて嫌だな
ななしさん
統計的な数字を扱う時は個々人の事情や気持ちは反映されませんから、そう感じるのは仕方ないところはありますね。
どのくらいの子供が生まれるかの予想がつかないと小学校の統廃合もできませんし、設備の更新も場当たり的になってしまって継続性に影響が出てしまいます。
個々の事情と国全体の事情のバランスをとるのが政治の役割なので、「このくらいの目標の実現にはこのくらいの予算が必要だ」という説得の材料としても用いられます。
数字に含まれる当事者であれば思うところは出てきますが、数字の用い方が国民の方を向いているか、そして施策が妥当かといった観点から見るほうが、政治の「意図」は見通しやすくなるかな、と思います。