移民と外国人労働者の違い 移民とは何か
日本政府は移民受け入れに消極的な方針を貫いています。
日本国籍を取得して帰化した人数はここ数年は1,000~1,100人前後で推移。2016年には1,033人となっています。
他の国と比較するまでもなく、日本に帰化した人数は非常に少ないことは分かります。
2017年10月にはドイツは移民受け入れを抑制すると報道されましたが、その数は年20万人以下にするというもの。日本とは桁が2つ違います。
ドイツのメディアによると、メルケル首相率いる保守与党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は8日、難民らの年間受け入れ人数を20万人以下に抑制する方針を固めた。
ドイツが難民受け入れ抑制へ 年20万人 | 日経新聞
一方日本では2014年に年間20万人の移民受け入れを検討すると報じられました。
政府が、少子高齢化に伴って激減する労働力人口の穴埋め策として、移民の大量受け入れの本格的な検討に入った。内閣府は毎年20万人を受け入れることで、合計特殊出生率が人口を維持できる2・07に回復すれば、今後100年間は人口の大幅減を避けられると試算している。
毎年20万人の移民受け入れ 政府が本格検討開始 | 産経新聞
ところがこの続報はなし。
移民というと一般には国籍を取得して帰化した人、というイメージがあります。
日本政府も帰化した人を移民、国籍を取得せずに職に就いている人を外国人労働者としています。
■移民 日本政府は明確な定義を持たないが、一般的に当初から永住・日本国籍取得を前提として新たに来日する外国人を指す。日本国籍を持たずに永住している人は含まない。数年間の出稼ぎ目的で就労滞在する人は「外国人労働者」として使い分けている。
産経新聞同上
日本政府の考える移民・外国人滞在者の定義を簡単に言えば
- 移民は日本での国籍取得をした人
- 永住者は日本国籍を取得しないで住み続ける人
- 外国人労働者は永住することを考えず、職のために来日する人
ということになります。
日本の移民受け入れと外国人労働者
外国人労働者としてよく話題になる「外国人技能実習制度」は基本的に3年の期限付き。2年間の延長が可能となったものの、最長でも5年。
技能実習生の家族の在留許可は下りない=家族で日本で暮らすことはできません。
日本の永住資格を取得するには10年が必要なので、外国人技能実習生は日本政府の定義で言えば移民に当たらず、日本での永住にもつながりません。
日本では建前上は単純労働者を受け入れていないので、合法的に単純労働者が永住ということは今のところありません。
したがって2014年に政府が発表した年20万人の移民受け入れ検討と、外国人実習生のつながりもないことになります。
実は移民=国籍取得者とは限らない
日本政府は移民を国籍取得した人と考えていますが、海外では国籍取得をしなくても移民とみなされることがあります。
国連統計では「その国の国籍を持たない12ヶ月以上滞在する人」を国際長期移民、「休暇や観光、友人や親戚の訪問、医療を受けたり宗教上の巡礼をのぞく3ヶ月以上12ヶ月未満滞在者」を国際短期移民として扱っています。
ある国に1年以上の滞在した人は移民とみなされることがあるということです。
外国籍の日本滞在者
日本には200万人以上の外国籍の滞在者がいます。
(1)永 住 者 727,111人 (構成比30.5%) (+ 3.8%)
(2)特別永住者 338,950人 (構成比14.2%) (- 2.8%)
(3)留 学 277,331人 (構成比11.6%) (+12.4%)
(4)技 能 実 習 228,588人 (構成比 9.6%) (+18.7%)
(5)定 住 者 168,830人 (構成比 7.1%) (+ 4.5%)
そ の 他 642,012人 (構成比26.9%) (+10.3%)
国連統計の基準では5までが移民となるため、日本には現在170万人以上の移民がいるということに。
技能実習生を増やしている理由
国連の定義はさておき、移民問題が争点になるヨーロッパでも国籍取得者とそうでない人とは分けて考えています。
日本では最長で5年間滞在することのできる技能実習生受け入れを大幅に増やしています。東京オリンピックまではこの流れは止まりません。
技能実習生は、期間満了後につながらない外国人受け入れと言えます。
移民受け入れは少子化問題とつながっている
経済学には人口ボーナスという考え方があります。
人口ボーナスは時代や地域によって当てはまらないこともあるものの、基本的な考え方として労働者の人口比率が高いほど経済にいい影響があるとするものです。
逆を人口オーナスといい、経済にとってマイナスになります。
技能実習生は人手不足解消ばかりでなく、労働人口が一時的に増えることで経済活動の一端を担うはずなのですが、出稼ぎなので、仕送りや貯金に回るため国内ではあまりお金を使いません。
外国人労働者とした一時滞在者ばかりでなく、移民も積極的に受け入れてきた西欧諸国は、人口構成の是正と、急激な少子・高齢化による人口オーナス是正も目的としていると考えられます。
とくにヨーロッパでは多数の移民による問題が発生していますが、国レベルでの経済を考えて受け入れている、ということです。
国家百年の計と言わないまでも、日本でも20年先の計を踏まえて、きちんと外国人労働者と移民についての議論をすべきです。