健康のための「適度な運動」ってどのくらい?日本とアメリカの基準を紹介
中性脂肪や悪玉コレステロールの多い脂質異常、メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病といった生活習慣病予防には適度な運動が必要と言われています。では、「適度な運動」とはどのくらいなのでしょうか?
適度な運動の基準は公開されてはいますが、分かりにくいために読み流してしまいがち。そこで、厚生労働省の基準とアメリカ疾病対策センターの基準を紹介します。
と、本題に入る前に、メッツ(METs)とエキササイズ(EX)について確認しておきます。メッツは厚生労働省の基準で用いられている運動単位。これを頭に入れておかないと、自分はあどのくらい運動が必要なのかの検討がつけにくくなります。
メッツ(METs)とエキササイズ(EX)
METsにEXといきなりややこしい言葉が出てきましたが、考え方さえ分かれば「なるほど」と思えるはず。
消費エネルギー量を表す単位として用いられるのは kcal(キロカロリー)ですが、消費エネルギーで考えると体重によって違いが出てしまいます。500kcal分の運動を推奨したくても、カロリーベースでは60kgの人と50kgの人では、必要な運動量が異なるため、どのくらい運動すればいいかがうまく示せない。
こうした体重による個人差を避けるため、厚生労働省の基準ではkcalを使わず、運動強度(運動の激しさ)と運動量をMETsとEXという単位を用いて表しています。
単位 | ||
メッツ(METs) | 身体活動の強さ(運動強度)を表す単位。 安静時を1メッツとして、その何倍の運動量に相当するかを表す。 | |
エクササイズ(EX) | 運動量を表す単位。 メッツ(運動強度)に身体活動の実施時間(時)をかけたもの。 | メッツ・時 |
安静時、つまり座ったり、リラックスしている状態の時を1メッツとして、その行為(運動)が安静時の何倍の運動量に当たるかを示す数値です。
運動としての基準となるのは3メッツ以上の身体活動です。2メッツだと、安静時よりは身体を動かしていることにはなりますが、「運動」としては考えないということですね。
■具体例
徒歩(4km/h) 3メッツ
徒歩(5.7~6.0km/h) 4メッツ
- 3メッツの運動を2時間行えば3(メッツ)x2(時間)= 6 エクササイズ(メッツ・時)
- 4メッツの運動を30分行うと4(メッツ)x0.5(時間)5= 2 エクササイズ(メッツ・時)
1時間未満の場合に時間に換算する部分がちょっと分かりにくいですが、時速で考えると納得できるはず。時速 4km で 30 分歩くと2キロ歩いた計算になる。厳密には単位の問題があるので時速と同じとは言えませんが、イメージとしてはこういうことです。
厚生労働省の公表している1週間の推奨運動量の基準には、メッツとメッツ・時(エキササイズ)が用いられています。本題の前に長々と書いてきたのは、厚労省がメッツを使っているからなんです。
厚生労働省基準「健康づくりのための身体活動基準2013」
厚生労働省が示す推奨運動量の基準では、18歳から64歳までは運動と身体活動を分けて設定しています。
運動量としてMETsを使っているで一見分かりにくく感じますが、基準としてはあいまいさがなく明確となっています。
ただ、運動強度が3メッツ以下の身体活動は含まれない点には注意が必要です。
18-64歳の基準
■18-64歳の身体活動(生活活動・運動)の基準
強度が3メッツ以上の身体活動を23メッツ・時/週
具体的には歩行又はそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分以上
■18-64歳の運動の基準
強度が3メッツ以上の運動を4メッツ・時/週
具体的には息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分
65歳以上の基準
■65歳以上の身体活動(生活活動・運動)の基準
強度を問わず、身体活動を10メッツ・時/週行う。
具体的には横になったままや座ったままにならなければどんな動きでもよいので、身体活動を毎日40分行う。
注)「毎日60分」となっていても、毎日でなく一週間の総和でかまわないという研究結果があります。
23メッツ・時/週の具体例
18歳以上の23メッツ・時を一週間でこなすためには、どの程度の運動が必要なのか、例を考えてみます。
- 時速6kmのウォーキング(4メッツ)を3時間で4x3=12エキササイズ(メッツ・時)
- 軽いジョギング(6メッツ)を2時間で6x2=12エキササイズ(メッツ・時)
- 合わせて週5時間で24メッツ・時
計算では運動のために週5時間必要になります。かなり時間がとられるように感じますが、毎日徒歩で駅まで15分歩いていれば、6日で90分、往復で180分。
3メッツx3時間(180分)=9メッツ・時
となります。残り14メッツはジョギング(6メッツ)2時間程度で補えばよい事になります。ただ、徒歩15分も時速6kmが必要なので、涼しい時期でなければ汗をかいてしまうかもしれません。
アメリカCDC(疾病対策センター)掲載基準
この項はアメリカCDC(疾病対策センター)に掲載されている基準は “2008 Physical Activity Guidelines for Americans"に拠っています。
成人
2時間30分程度の中程度の有酸素運動(早歩き)/週
主要な筋肉(足、腰、背中、腹部、胸、肩、腕)強化のためのトレーニング(週2日以上)
または
1時間の15分程度の高強度の有酸素活動(ジョギングやランニング)/週
主要な筋肉(足、腰、背中、腹部、胸、肩、腕)強化のためのトレーニング(週2日以上)
または
高強度と中程度を混合した有酸素運動
主要な筋肉(足、腰、背中、腹部、胸、肩、腕)強化のためのトレーニング(週2日以上)
3通りある上に細かいのでちょっとややこしいですが、アメリカの基準では筋トレが必須となっているのが特徴です。
一番上の基準ではウォーキングやジョギングの所要時間が2時間30分(150分)と短くなっていますが、基本がbrisk walking(早歩き)であるため、厚労省の基準で言えば「3メッツ」でなく「4メッツ」のウォーキングに当たると考えられます。4メッツの運動を150分で計算すると、10メッツ・時に相当になります。
あとは筋トレを週2日以上。筋トレは筋肉ばかりでなく、心肺機能などの循環器の機能が強化(年齢や運動量によっては現状維持)されるため、持続的な有酸素運動を長時間行うよりも効率がいいとする考え方もあります。
まとめ
アメリカCDCに記載されている週150分の運動の有効性は、さまざまな研究から明らかになっています。一週間あたりの運動時間を2倍の300分、あるいは3倍の450分にしても、さほど違いは現れない結果があります。
150分以上やってもさほど効果がないなら、筋トレにしたほうがいいという考え方なのでしょう。合理的ですね。
厚生労働省とCDCの違いは筋トレを含めるかどうかで、運動量として考えると大きな違いはないようです。
ただ、普通の早さの徒歩も運動量に組み入れられる厚生労働省基準のほうが取り組みやすそうですね。
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