フィンランドで試験導入されたベーシックインカムの詳細

フィンランド・ヘルシンキ

すべての国民に最低限の生活を送るのに必要とされる金額を支給する制度ベーシックインカム(BI)。BIの考え方はシンプルで、現在は個別に行われている生活保護や医療補助、子育て支援のための給付をBIに一本化することで、公平性を確保し、効率化しようというものです。

子どもにも受給資格があるため、認可保育園に落ちて認可外保育に子どもを預けることになって保育料が家計を圧迫するということがなくなります。

たとえば認可保育園への助成金を廃止し、「保育料はBIから捻出してね」ということも可能になります。仕事をしたいお母さんなら子どもの保育料をBIから出せばいいし、小学校に入るまではそばに居てあげたい、ということなら、働きに出なくても子どもの学資を貯めることができます。

一人目の子どもが保育園に通ってる人なら二人目も入りやすいのは合理的ではありますが、一人目がいない親からすれば不公平感が募ります。

補助金を廃止すれば家庭ごとの判断で保育園を選択できるようになるので、不公平感がなくなります。

もちろんBIには財源はどうする、勤労意欲がなくなるんじゃないかといった批判はあります。その一方で格差の広がりが問題となっている国では、富の再分の方法として注目を集めています。

フィンランドの大規模なベーシックインカム試験導入

フィンランドでは2017年1月1日より大規模なベーシックインカムの実験を行っています。実施期間は2年。

対象は2016年11月に失業保険か年金をKela(フィンランド社会保障協会)から受け取っていた25歳から58歳からランダムで選ばれた2,000人。男女比は52%対48%。ほぼ半々。

支給額は560ユーロとなっています。一時解雇は含まれていません。

他の補助とは全く独立しているため、就職して他の補助や失業保険の受給資格を失っても、560ユーロはもらい続けることができます。もちろん報告をする必要はありますが、支給される分には税金もかかりません。

対象者に選ばれたら辞退できない

ランダムで選ばれた対象者には無条件に560ユーロが支払われますが、辞退することはできません。海外で30日以上滞在すると支給されませんが、戻れば再開されます。

その他の社会保障、たとえば失業保険と住宅補助を受給中でも無条件に給付され、就職して失業保険の受給資格を失っても、BIは継続して受け取ることができます。

無条件に支払われるため、職が見つかっても収入が社会保障費よりも少ないために就職を見送る、という矛盾が解消されます。

この実験では、よく議論になる「一定額の無条件支給が勤労意欲が減退させる」論にも参考になることでしょう。

行動の分析のために年齢や就職状況のほか個人IDや名前も行政と研究グループで共有されるので、560ユーロもらえるからといって喜べない人もいるかもしれません。

560ユーロは十分な額なのか

560ユーロは118円で計算すると6万6千円ほど。支給額だけを見ると最低限の生活も難しい額ですが、BIは失業保険に上乗せされるので、実際に受け取る額はもっと多いことになります。

Kelaのサイトでは子どものいる失業した女性の例が挙げられています。

失業保険で一日32.40ユーロ、子ども手当てで7.67ユーロを受け取っている場合、月に861.27ユーロ、税引き後は689.38ユーロが得られます。

これに加えて税金のかからない560ユーロが支給されることになります。

抄訳

つまり、月1249.38ユーロが受け取れる事になります。

職が見つかった場合は給料には税金がかかりますが、税金のかからない560ユーロはもらい続けられます。そのため働いても損はなくなります。

また、なんらかの学校に通うのなら学資補助もそのまま受けられます。

結果が出るのは2年以上先

実験期間は2年間。さらに分析の時間を考えると、わたしたちが結果を知るのはかなり先のことです。オランダでは自治体ごとの導入は考えられていますが、BI支給の対象者が異なります。

フィンランドの失業率は高いため、失業者への支給の影響を見極めたいのかもしれません。

失業率が高い一方ジニ係数は安定しているので、数字を見る限りでは再分配は機能しています。

フィンランドジニ係数2014まで

フィンランドのベーシックインカムの方向性は現在の社会保障をBIで置き換えるものなので、導入するとしても財源は必要ないとされています。意図するところが既存の枠組みの置き換えとはいえ、本導入になれば財政負担は増える可能性はありますが、その辺も実験によっておいおい分かっていくことでしょう

すでに高税率な国と、そうでない国では直接比較することはできません。しかし国レベルでの大規模な実験は、今後のベーシックインカムの議論に影響を与えるでしょう。

関連リンク

Kela – フィンランド社会保障協会