アロマキャンドルは本当にマイナスイオンを発生させるのか?

2017年5月5日雑学、雑感

 

連れ合いがときどきアロマキャンドルを楽しんでいます。いい匂いだしリラックス効果もあるんだろう。自分で買ったものでもないしと、これまでとくに気にせず僕も香りを楽しんでいました。

ある日、アロマキャンドルを灯しながら彼女が気になる一言を口にしました。

「アロマキャンドルには、マイナスイオンを発生させて空気をきれいにする効果もあるんだって」

ぼくが根拠のはっきりしない効果をうたった製品があまり好きでなく、気になったら調べることを彼女も知っているため、普段はめんどくさくなるキーワードは口にしないようにしています。

彼女はマイナスイオンは健康によさそうだと思っているようですが、ぼくの前では一切口にしませんw

しかしぼくが「マイナスイオン」のドライヤーや空気清浄効果には異を唱えないことから、清浄効果については教えても大丈夫と判断して空気清浄効果を口にしたようです。

マイナスイオンが出れば何らかの清浄効果はあるだろうとは思うので、あえてスルーしたのですが…

やはり気になった所があったので調べることにしました。疑問点は次の3つ。

  1. 蜜蝋(ビーワックス)はマイナスイオンを発生させるか
  2. 「空気がきれいになる」は何を指しているのか
  3. ロウソクの炎程度で部屋の空気を左右するほどのマイナスイオンが発生するのか

マイナスイオンで空気がきれいになる根拠

アロマキャンドルaroma candle

 

マイナスイオンは、一般に負の電化を帯びたイオン状の物質を表します。

マイナスイオンはかつて健康にいいとかリラックスできるといった、よくわからない効果が喧伝されていましたが、今はなりを潜めているようです。

現在販売されている大手家電メーカーのマイナスイオンをうたった製品は、まあ効果のある使い方をされているようです。

たとえばドライヤーは、正の電荷を帯びた髪に負の電荷をもつイオンをぶつけることで中和して、しっとりさらさらを実現しているのだとか。これは体感できます。

空気清浄機であれば、強烈な酸化作用のあるラジカル(電子が中途半端で不安定な状態の物質)で菌を壊せることはわかります。

ほこりや花粉が正の電荷を帯びているなら、負の電荷を帯びたフィルターで普通に吸着するほうが早いので、マイナスイオンを放出する意味はあまり感じられません。が、雑菌には効果はあることでしょう。

アロマキャンドルでマイナスイオンが発生して空気がきれいになるとしたら、殺菌除菌効果かな。

そう当たりをつけて調べたのですが、空気がどうきれいになるかの説明を見つけることはできませんでした。

キャンドルを販売しているお店では、薬機法の関係上殺菌という言葉を使えないので、マイナスイオンの殺菌効果とは表現できず、きれいになるとしか書けないのかもしれないのでひとまず置くことに。

 

アロマキャンドルでマイナスイオンが発生するか

アロマキャンドルaroma candle

次にアロマキャンドルでマイナスイオンが発生するか、という疑問です。

「水分 キャンドル マイナスイオン」でググると「キャンドルが燃焼する際に生じる水分からマイナスイオンが発生する」という記事が上位に並びます。しかし、その根拠が示されているものは皆無。

「水分 キャンドル マイナスイオン」の検索結果

 

その結果行きついたのが「はじめての手づくりキャンドル」という本。すべてのサイトのネタ元はこれかなかな。

はじめての手づくりキャンドル 日本ヴォーグ社, 2013

https://books.google.co.jp/books?id=hsGlAFy3_RMC&printsec=frontcover

 

この本でも根拠が示されておらず、埒が明かないので、アロマから離れてき調べてみたところ、ロウソクの火からマイナスイオンが発生するという信頼できそうな根拠が見つかりました。

ただし、マイナスイオンが発生するのは熱電離によるという説明なので、水分云々とは無関係です。

熱電離で生成された電子は,電場で加速されて大
気分子と衝突を繰り返しながらプラス極へとドリフトして
行く.平均衝突距離は 1 μm 程度と短いため電場から得る
エネルギーは小さく,放電に進展するほどの電離衝突を起
こすまでには至らない.しかし,電子と酸素分子との電子
付着衝突の断面積は大きく,負イオンが生成されているも
のと考えられる.

プラズマ・核融合学会誌 第88巻第6号 2012年6月

http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2012_06/jspf2012_06-297.pdf

 

熱電離

熱的イオン化とも。
気体の温度が高温になり、熱運動で分子同士が衝突し、電子が電離すること。

ロウソクからマイナスイオンが発生するらしいことは分かった。次はその量です。

 

ロウソクから発生するマイナスイオンの数

アロマキャンドルaroma candle

 

マイナスイオンの量は、1立方センチメートル(個/cm3)あたり、または1㏄中(個/cc)の個数で計測するようです。

少し検索したところ見つかったのが、一般に滝だと3,500~5,000個/cm3程度、アロマに使われている蜜蝋ならば20,000個/cm3という情報。

しかしこれでは測定した場所が分からないし、そもそも規模が違うので比較のしようがない。

マイナスイオンに殺菌作用があるのなら当然不安定で、すぐに安定した分子になるはず。したがってそんなに距離を移動できるわけがないので、どこで計測したかは重要です。

 

あまつさえ、個/cm2だったり個/cmだったりするサイトが多数上位に引っかかるのだから厄介でした。同じ出典元のコピペやリライトの孫引きなんでしょうが、もののみごとに同じ数字と並び方。個人ブログならともかく、お店のサイトでもそういうところがありました。

 

閑話休題

上述の「はじめての手づくりキャンドル」にも3,500個~5,000個の数字は記載されています。しかしその出典元が分からない。

さらに言うと、記載されている単位が個/cmでcm3(立方センチ)ではないため信ぴょう性にも欠ける。結局分からずじまいです。

 

信用できるソースが見つからない

アロマキャンドルaroma candle

ぼくの探し方が悪いとしても、あまりにも信用できるソースが見つからない。この状況は英語で検索しても変わりませんでした。

 

で、疑似科学について多く考察していたA Breath of Reasonというサイトの記事を一読して、これ以上調べることをあきらめることにしました。

A Breath of Reasonの筆者は科学や物理学の専門家ではないという点は留意する必要はありますが、根拠のあるソースを求め続けているという点で信頼できます。

A Breath of Reason

リンク先の記事「マイナスイオンに関する負の研究:蜜蝋エディション」では、いくつかのウェブサイトで蜜蝋キャンドルが「天然のイオン発生器」として宣伝されていることに興味を抱いた読者からの疑問に答えています。

海外でも私の遭遇した状況と同じようで、マイナスイオンの効果をうたっているのにその根拠となる情報源を明示していなかったり、参照が不適切であったり、といった具合で信頼に足るソースにたどり着けないということです。

そのため著者は、自分で医療論文を検索したりと四苦八苦したようですが、やはり根拠あるソースは見つからない。そして、それらのサイトの主張は嘘か、あるいはお粗末なものだと結論付けています。

ただ、この記事では蜜蝋キャンドルは空気をきれいにするか?という疑問には否としていますが、蜜蝋キャンドルからマイナスイオンは発生するか、という点にはYesと返答しています。そしてプラスイオンも発生しているので、余剰として生じるマイナスイオンはそれほどはないだろうとしています。

 

結局蜜蝋とマイナスイオンについては分からなかった

蜜蝋とマイナスイオンについてはそれなりに時間をかけて調べたのですが、根拠を見つけることができませんでした。

空気がどうきれいになるかもわからずじまいです。

 

結果が出なかったので徒労感はあるものの、海外でも同じような状況なのだと分かったことは収穫と考えてよしとします。

このあたりのことに詳しい方がいらっしゃったら、教えてもらえると嬉しいです。